日米か、中国か? TPP参加を巡る韓国の苦渋の決断
(週刊文春 2013年12月12日号掲載) 2013年12月5日(木)配信

 韓国政府は11月29日、TPP(環太平洋経済連携協定)に「参加することへの関心」を表明した。関心という抑えた表現になっているものの「事実上の交渉参加表明」(朝鮮日報)と言っていい。

 これまで2国間の自由貿易協定(FTA)を重視してきた韓国は、すでに米国、EUとFTAを締結し、中国ともFTA交渉が大詰めを迎えている。その最中にあえてTPP参加に舵を切る背景には、「日本への強烈なライバル心と韓国経済の先行きに対する不安がある」(大手商社幹部)。

 輸出依存度の高い韓国にとって、最近のウォン高は大打撃。日本円と韓国ウォンの実効レートが5年ぶりに逆転したことは日韓の立場逆転を象徴している。さらに東アジアで「交易・投資ルール」を決定付けるTPPで日本に先を越されることになれば、韓国経済の長期低迷は避けられない。TPP交渉参加は苦渋の選択と言える。

 背中を押したのは米国だった。米通商代表部(USTR)のカトラー代表補は今年に入り2回も訪韓し、韓国のTPP参加を促していた。しかし、「TPPは中国包囲網」と警戒する中国に配慮して、朴政権は決断を先送りしてきた。

 最大の貿易相手国の中国に配慮しつつ、日米が主導するTPPへ参加する道を選ばなければならない朴槿恵大統領はハムレットの心境だろう。

 その中国が防空識別圏に韓国の離於島を含めると表明したことで状況は一変した。軍事面の中韓の軋轢(あつれき)は経済面へも影響を及ぼしかねない。

韓国政府高官は依然として「中韓FTAが最優先課題」と強調するが、「TPP交渉参加に舵を切ることで中国の防空識別圏問題を牽制する意図も働いている」(前出・大手商社幹部)ことは間違いない。

 今月2~6日にはバイデン米副大統領が日中韓を訪問しトップと会談する。その直前にTPP交渉参加を表明しなければ韓国は危うかった。

 しかし、5月に訪米しオバマ大統領と会談した朴大統領は、「歴史に目をつぶる者は未来を見ることが出来ない」と慰安婦問題を蒸し返し、顰蹙(ひんしゅく)をかったばかり。「いまさら日米にすり寄っても信頼回復には時間がかかる」(外交筋)との指摘もあり、日米中の間で揺れ動く朴政権の先行きが懸念される。

文/森岡 英樹(ジャーナリスト)

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TPPはいつのまにか日米主導だったんだ。。。