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 田坂広志 「風の便り」 特選  第117便
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 「言葉」がもたらすもの

 昔、幼稚園を訪問したとき、
 そこで耳にした、無邪気な会話を思い出します。

 先生が、園児の一人、オサム君を誉めました。

  オサム君は、本当に、良い子ね。

 そのとき、嬉しそうなオサム君の横にいた
 ノリコちゃんが、悲しそうに、聞きました。

  じゃあ、ノリコは、悪い子なの。

 この無邪気な会話を思い出すとき、
 「言葉」というものの本質に、そして、その怖さに
 気がつきます。

  「世界の分節化」

 「言葉」は、それを語った瞬間に、
 本来一つであった世界に「境界」を持ち込み、
 その世界を二つに「分節化」してしまうのです。

 そして、我々の心は、いつも、
 その「境界」において、
 葛藤を生み出し、苦しみを味わうのです。

  では、なぜ、我々に「言葉」が与えられたのか。

 そのことを考えるとき、我々は、
 人間の心の成長の
 不思議なプロセスに気づくのかもしれません。

 2003年8月11日
 田坂広志

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褒め言葉もむずかしいですね。