気まぐれ何でも館:(567)至福の旅びと(篠弘歌集)(5)
  
 革命の遺産となりし透きとほるスラヴをとめの白鳥の脚
  
 青年がドルに換へむと作りたる琥珀のブローチ一つを選りぬ
  
 革命より幾万果てしネヴァ河に夕明りつつ浸しくる霧
  
 蒼穹が黄に染まりゆく夕街のいづべの教会の鐘を聴かむか
  
 夜半過ぎて暗みそめたる空の藍キイロフ橋にうつしみは冷ゆ
  
 トレチャコフの画廊の壁に金色に修復されてイコンが戻る
  
 桜の樹めぐりに植ゑしチェホフの白き墓石に六月の雨
  
 エリツィンが戦車に立ちて拳あぐ闇をとよもす女声の歓呼
  
 遅れつつ巡る会議に顔ぶれをまづ確かめてもの言ひはじむ
  
 会合にありて発言の機を待つや椅子軋ましむ若きひとりが
  
13.11.15 抱拙庵にて。