東電をぶっ壊す!小泉純一郎社長待望論
国費投入で焼け太りの黒字化 自民党分社化案はまやかし 経産省との策謀メールを入手
(週刊朝日 2013年11月22日号配信掲載) 2013年11月13日(水)配信
かつて超優良企業だった東京電力が、ついに“解体”される。だがその裏では、安倍政権、経産省、メガバンクが結託し、国民にツケを回す策謀が蠢いていた。本誌はその“証拠”メールを複数、入手。この期に及んで焼け太る東電を“ぶっ壊す”のは、もう、あの男しかいない──。
〈自民党でも、近く、復興本部の大島氏が廃炉専門会社について、提言をまとめそうです。これで、描いたものが軌道に乗って進むようになるはずです〉(経済産業省官僚)
〈廃炉、汚染水を他に押し付けることができれば、そこの連中の責任にできます。肩身の狭い思いをしなくていい。忘年会、送別会、存分にできるってことですね〉(東京電力社員A)
本誌が入手したこのやり取りは、9月初旬にメールで交わされた。
1人の経産官僚と複数の電力・プラントメーカー社員が“情報交換”しているメーリングリストから抜粋したものだ。
謀議のテーマは、目下、話題になっている東電の分社化について。
折しも10月末、自民党の東日本大震災復興加速化本部(大島理森本部長)が、東電の分社化案をまとめたばかり。メールの内容とも符合する。
自民党の案は、発電や送電を行う東電本体から、福島第一原発の廃炉や汚染水対策を行う部門を切り離そうというものだ。
方式として(1)社内分社化、(2)資本を切り離す完全分社化、(3)独立行政法人化など複数案が示されており、事故処理部門には国民の税金が投入されるという。
ただ、この案は大事なことを明言していない。自腹では事故処理ができず、すでに5兆円近い国費が投入され“ゾンビ企業”となった東電を破綻処理するか、否かである。
詳しくは後述するが、東電がつぶれれば、株主、貸手は大損害を被るが、その分、電気料金の値上げや税金の投入は少なく済むことになるのだ。
東電を早期に破綻処理すべきだと主張してきた自民党の河野太郎衆議院議員はこう語る。
「分社化して税金を投じるからには、当然、その前に破綻処理するものと理解しています。金融機関や株主は事故のリスクも勘案した上で東電にお金を出し、金利や配当による収入を得ていたわけで、その責任は負わねばならない。東電経営陣にも総退陣してもらわないと、国民が納得しない」
ところが、現実は違う方向に進んでいる。
安倍晋三首相は国会で東電の破綻処理について問われたとき、「引き続き民間企業として、損害賠償、廃炉、汚染水対策、電力安定供給などを確実に実施していくべきだ」(10月17日)と明確に否定したのだ。
大島氏も11月8日、メディアの取材に「東電を破綻させないことが前提」と言い切った。
ある東電幹部が、水面下の動きを打ち明ける。
「うちの本音は、廃炉会社を赤字部門として切り離し、本体は破綻させずにきれいな黒字会社、優良会社として生き残ること。その線で、自民党と交渉が進んでいる」
冒頭の経産官僚と東電社員とのメールにも、この話を裏付けるようなやり取りが随所に出てくる。
〈赤字を特定の会社に押し付け、収益が出せるところで稼ぐ。某有名新聞はそれをやってんだから、メディアもなにも言ってくることはない。東電さんは、焼け太りなんて、叩かれてしまうかな〉(経産官僚、2月下旬のメール)
経産官僚が記した「某有名新聞」とは、1977年に経営難から負債部門を切り離して再建した毎日新聞社と思われる。原発事故を起こし、国民の血税が投入された東電とは事情が全く違うのだから、ここで持ち出すのは不見識であろう。
〈福島のマイナスイメージを切り離す、原発セールスするためにも事故への国費投入は是非ものだ。この政権は、物分かりが良い〉(経産官僚、2月下旬)
〈こんなにいじめられ、苦労したのですから、ちょっとくらいは太りたい〉(東電社員B、3月初旬)
事故を起こした責任については、まるで“他人事”のように語った。
〈上手にやれば、国から資金が投入され、これまでの体制が維持できる。分社化という、マジックいやごまかしですが、早く、進めてゆきたいな。廃炉だとか、除染だとか、おさらばしたい。事故が起こってから、なんでもわが社が悪いというが、わかってない。イチエフ(福島第一原発)がヘマやったことなんだから〉(東電社員C、5月下旬)
〈安倍総理、またもトルコへ外遊の話を聞きかじりました。それほどまでに、原発に入れ込んでもらって、こちらが恐縮するほどですよ〉(東電社員A、9月初旬)
トップセールスで原発を売り込んだトルコに10月末、今年2度目の訪問をした安倍首相に感謝の意まで示しているのだ。
事故処理を別会社に押し付け、利益を皮算用しているのだから、まさに「焼け太り」そのものだ。
11月8日には、東電自身による経営改革案が明らかになった。東電が持ち株会社となり、その下に「発電」「小売り」「送配電」の3部門を社内分社化して位置づけるというものだ。
当然、「破綻処理」についてはどこにも触れられていないのだが、茂木敏充経産相は、「電力会社が改革を先取りして社内の体制を整えるのは望ましい方向だ」と評価し、あっさり“お墨付き”を与えてしまった。
「東電が今の会社形態でいくことがもう限界なのはわかっている。ただ、安倍さんを含め、われわれが心配しているのは、コアな技術者が数百人規模で他社や海外企業に引っ張られて流出していること。食い止めるには、負の部分をしっかり分けて、ステータスを取り戻してあげないといけない」(安倍首相側近)
なり振りかまわぬ東電救済に突き進む安倍政権。だが、このままでは、国民にすべてのツケが回される事態になりかねないのだ。
新会社トップに孫正義、豊田章男、ゴーン、稲盛和夫らの名前も
破綻処理したほうが国民負担は3兆円減少との試案
衝撃の事実が、10月31日に発表された東電の決算(4~9月期)で明らかになった。膨大な費用がかかる事故処理で赤字決算かと思いきや、なんと3年ぶりの黒字となったのだ。
前年の同じ時期は1662億円の大幅な経常赤字だっただけに、急回復ぶりが目立つ。発表資料によると、コスト削減を行ったというが、その内容が驚きだ。
人件費の削減(183億円)に加え、修繕工事の費用(367億円)を削っているのだ。中でも、原子力発電所の修繕費をいちばん大きく削っており、78億円も減少させた。
さらに国民に電気料金の値上げを押し付けた結果、売り上げは大幅に増えたが、数字を見る限り、稼いだカネを事故処理に投入せずに、利益を確保している。
「現場はどう考えても赤字。適正なコストカットならいいが、やりすぎてかえって危険なのが現状です」(福島第一原発作業員)
これでは、事故処理は遅々として進むはずがない。
東京商工リサーチの友田信男情報本部長が解説する。
「決算をよく見せるために、原発修繕の費用を先送りしている。これはコスト削減とはいえない。やるべき原発の補修が進んでいないとすれば、本末転倒です」
東電は、どうして黒字にこだわったのか。
「借金がある以上、見た目をよくしなければ、融資を継続してもらえなくなるからです」(前出の友田氏)
3期連続の赤字となれば、融資を見合わせる金融機関が出てきてもおかしくはない。12月にはメガバンクを中心に2千億円の融資継続と、社債の償還分3千億円の新規融資を控えている。つまり、事故処理より、東電は会社の存続を優先させたのだ。数字から透けて見える東電の「体質」は、それだけではない。
賠償や除染、汚染水処理などの問題解決にかかる費用は数十兆円にのぼるといわれる。将来的に発生する費用を見積もると、実質的に“経営破綻”している。だが、決算上でその数字を確認することはできない。
元経済産業省官僚の古賀茂明氏がそのカラクリを明かす。
「国際的な会計の常識として、将来発生する費用は合理的に見積もって決算で計上しなくてはいけない。賠償、除染費用などはこれから確実に必要になる。しかし、どれだけかかるかわからないという理由で東電は計上しなかったのです」
廃炉費用は数千億円に上る見込みだが、経産省は東電がこれを「特別損失」として計上しなくて済むように、会計制度の見直しまで踏み込んだ。
「電力会社の会計基準だけは、経産省の規則で変えることができます。実質は“債務超過”に陥っている東電を“粉飾決算”させ、生きながらえさせているのです。かつて銀行の会計基準も旧大蔵省が決めていた。その結果、不良債権が隠蔽され金融危機を招いた。それと同じことが起きている」(前出の古賀氏)
資本主義の論理から言うと、東電は破綻処理をして株主や銀行の責任を問うべきであろうが、そういう責任論をすっ飛ばして、いきなり罪のない国民に負担をさせているのが現状だ。
こんな理不尽がまかり通っていいのか、と東電破綻処理の議論が再び、熱を帯びつつある。
だが、東電が破綻すると、3・4兆円以上の金融機関の債権が吹っ飛ぶという世紀の倒産劇となる。だからこそ、拙速に破綻させると、経済への影響は計り知れない。東電に今も融資する約70行の銀行団はメーンのメガバンクなどを除くと、ほとんどは地方銀行だ。
「融資が焦げ付けば、中小企業への貸し渋りや貸しはがしにつながる可能性があるでしょう」(経済アナリストの新=しん=光一郎氏)
金融機関の体力が奪われれば、金融不安が起き、上向き始めたアベノミクスが腰折れる危険性も出てくる。だが、前出の古賀氏は金融不安の可能性を否定する。
「昨年度のメガバンクの最終利益の合計は約2・2兆円。東電向けの債権の大半がカットされて、最終利益が1年目だけ赤字になったとしても、2年目は黒字確実です。この程度で金融不安が生じることはないし、貸し出し余力がなくなったという銀行には『公的資金を入れましょうか』と言えば、『いえいえ大丈夫』と逃げるに決まっている」
そして実は破綻させたほうが国民にとってメリットがあるという。古賀氏が持論をこう述べる。
「日本航空が経営破綻したときは、金融機関の債権は約9割がカットされた。これを東電に当てはめると約3兆円。3兆円の返済が不要になれば、その分税金投入、すなわち、国民負担は減る。破綻処理をしなければ、国民の税金3兆円分は銀行返済に充てられてしまう。どちらが国民のためになるか自明です」
返済を免除される3兆円で、汚染水対策の費用などは捻出できる上、5年以上は柏崎刈羽原発を稼働させず、電気料金を値上げしなくてもやっていけるという。
「金融機関はリスクを判断し、東電に貸し込んだはず。その責任を取らずに国民に損を押し付けるなんて言語道断。経産省は天下り先である金融機関を守るために東電をつぶさないようにしているとしか思えない」(古賀氏)
一方、金融機関は東電の経営破綻に備え、着々と手を打っているという。
「過去に行った融資を、ファンドを経由して私募債に切り替える複雑な仕組みを使って優先的に守られる債権に順次、置き換えているのです。電力会社の社債などは、電気事業法第37条によって、返済が一般債権よりも優先されて弁済される。銀行側もヒヤヒヤしているのでしょう」(嘉悦大学の小野展克准教授)
それならば、ただちに破綻処理をし、「新生東電」を誕生させるべきではないか。
経営破綻した日本航空をわずか3年で再上場させ、よみがえらせたのは、京セラの創業者、稲盛和夫氏だった。郵政民営化で発足した日本郵政の初代社長にも西川善文・元三井住友銀行頭取が就任した。新生東電にも、こうした財界人の助力が必要になる。
「期待をこめていえば、トヨタ自動車の社長である豊田章男氏。知名度や人脈、経営手腕が求められるからです。米国でリコール問題で裁判になったとき、前面に出て問題を解決した。リーマン・ショック後の業績を回復させた日産自動車のカルロス・ゴーン氏もいい」(前出の友田氏)
慶応義塾大学の金子勝教授は、孫正義氏を推す。
「原発事業を外せば健全な企業。5兆円になるといわれる送配電網を持ち、有力な水力や火力の発電所をたくさん持っている。孫正義氏は『自分がやります』と手を挙げず、誰も引き受け手がなければ、『私がやりましょうか』という舞台をつくるんじゃないかな」
環境系シンクタンクの幹部は、稲盛氏や西川氏の再登板に期待するという。
かつて、「自民党をぶっ壊す」と絶叫した小泉純一郎氏を待望する声も上がる。
「インサイダー」編集長の高野孟氏はこう語る。
「破綻後の東電は、廃炉や自然エネルギーの推進が大きな仕事になる。『原発ゼロ』を唱える小泉氏が社長になれば物語性があって世間の見方も変わるし、社内にも緊張感が生まれ、これまでのようなダラダラ仕事はできなくなるのでは」
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、
「小泉氏には名誉会長や特別顧問のように、実務にかかわらない“象徴”として参加してもらえばいいのではないでしょうか」
では、当の小泉氏はどう思っているのか。
「彼は今、脱原発の国民運動を準備している。近々、某出版社から脱原発に関する本を出版する予定です。今後、さらにメディアへ露出し、持論である脱原発のビジネスモデルを訴えれば、国民運動は春ごろから盛り上がっていくのでは?」(古賀氏)
東電にのり込む日は来るのか……。本誌取材班
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日本国民は政治家になめられてるのとちがう?
国費投入で焼け太りの黒字化 自民党分社化案はまやかし 経産省との策謀メールを入手
(週刊朝日 2013年11月22日号配信掲載) 2013年11月13日(水)配信
かつて超優良企業だった東京電力が、ついに“解体”される。だがその裏では、安倍政権、経産省、メガバンクが結託し、国民にツケを回す策謀が蠢いていた。本誌はその“証拠”メールを複数、入手。この期に及んで焼け太る東電を“ぶっ壊す”のは、もう、あの男しかいない──。
〈自民党でも、近く、復興本部の大島氏が廃炉専門会社について、提言をまとめそうです。これで、描いたものが軌道に乗って進むようになるはずです〉(経済産業省官僚)
〈廃炉、汚染水を他に押し付けることができれば、そこの連中の責任にできます。肩身の狭い思いをしなくていい。忘年会、送別会、存分にできるってことですね〉(東京電力社員A)
本誌が入手したこのやり取りは、9月初旬にメールで交わされた。
1人の経産官僚と複数の電力・プラントメーカー社員が“情報交換”しているメーリングリストから抜粋したものだ。
謀議のテーマは、目下、話題になっている東電の分社化について。
折しも10月末、自民党の東日本大震災復興加速化本部(大島理森本部長)が、東電の分社化案をまとめたばかり。メールの内容とも符合する。
自民党の案は、発電や送電を行う東電本体から、福島第一原発の廃炉や汚染水対策を行う部門を切り離そうというものだ。
方式として(1)社内分社化、(2)資本を切り離す完全分社化、(3)独立行政法人化など複数案が示されており、事故処理部門には国民の税金が投入されるという。
ただ、この案は大事なことを明言していない。自腹では事故処理ができず、すでに5兆円近い国費が投入され“ゾンビ企業”となった東電を破綻処理するか、否かである。
詳しくは後述するが、東電がつぶれれば、株主、貸手は大損害を被るが、その分、電気料金の値上げや税金の投入は少なく済むことになるのだ。
東電を早期に破綻処理すべきだと主張してきた自民党の河野太郎衆議院議員はこう語る。
「分社化して税金を投じるからには、当然、その前に破綻処理するものと理解しています。金融機関や株主は事故のリスクも勘案した上で東電にお金を出し、金利や配当による収入を得ていたわけで、その責任は負わねばならない。東電経営陣にも総退陣してもらわないと、国民が納得しない」
ところが、現実は違う方向に進んでいる。
安倍晋三首相は国会で東電の破綻処理について問われたとき、「引き続き民間企業として、損害賠償、廃炉、汚染水対策、電力安定供給などを確実に実施していくべきだ」(10月17日)と明確に否定したのだ。
大島氏も11月8日、メディアの取材に「東電を破綻させないことが前提」と言い切った。
ある東電幹部が、水面下の動きを打ち明ける。
「うちの本音は、廃炉会社を赤字部門として切り離し、本体は破綻させずにきれいな黒字会社、優良会社として生き残ること。その線で、自民党と交渉が進んでいる」
冒頭の経産官僚と東電社員とのメールにも、この話を裏付けるようなやり取りが随所に出てくる。
〈赤字を特定の会社に押し付け、収益が出せるところで稼ぐ。某有名新聞はそれをやってんだから、メディアもなにも言ってくることはない。東電さんは、焼け太りなんて、叩かれてしまうかな〉(経産官僚、2月下旬のメール)
経産官僚が記した「某有名新聞」とは、1977年に経営難から負債部門を切り離して再建した毎日新聞社と思われる。原発事故を起こし、国民の血税が投入された東電とは事情が全く違うのだから、ここで持ち出すのは不見識であろう。
〈福島のマイナスイメージを切り離す、原発セールスするためにも事故への国費投入は是非ものだ。この政権は、物分かりが良い〉(経産官僚、2月下旬)
〈こんなにいじめられ、苦労したのですから、ちょっとくらいは太りたい〉(東電社員B、3月初旬)
事故を起こした責任については、まるで“他人事”のように語った。
〈上手にやれば、国から資金が投入され、これまでの体制が維持できる。分社化という、マジックいやごまかしですが、早く、進めてゆきたいな。廃炉だとか、除染だとか、おさらばしたい。事故が起こってから、なんでもわが社が悪いというが、わかってない。イチエフ(福島第一原発)がヘマやったことなんだから〉(東電社員C、5月下旬)
〈安倍総理、またもトルコへ外遊の話を聞きかじりました。それほどまでに、原発に入れ込んでもらって、こちらが恐縮するほどですよ〉(東電社員A、9月初旬)
トップセールスで原発を売り込んだトルコに10月末、今年2度目の訪問をした安倍首相に感謝の意まで示しているのだ。
事故処理を別会社に押し付け、利益を皮算用しているのだから、まさに「焼け太り」そのものだ。
11月8日には、東電自身による経営改革案が明らかになった。東電が持ち株会社となり、その下に「発電」「小売り」「送配電」の3部門を社内分社化して位置づけるというものだ。
当然、「破綻処理」についてはどこにも触れられていないのだが、茂木敏充経産相は、「電力会社が改革を先取りして社内の体制を整えるのは望ましい方向だ」と評価し、あっさり“お墨付き”を与えてしまった。
「東電が今の会社形態でいくことがもう限界なのはわかっている。ただ、安倍さんを含め、われわれが心配しているのは、コアな技術者が数百人規模で他社や海外企業に引っ張られて流出していること。食い止めるには、負の部分をしっかり分けて、ステータスを取り戻してあげないといけない」(安倍首相側近)
なり振りかまわぬ東電救済に突き進む安倍政権。だが、このままでは、国民にすべてのツケが回される事態になりかねないのだ。
新会社トップに孫正義、豊田章男、ゴーン、稲盛和夫らの名前も
破綻処理したほうが国民負担は3兆円減少との試案
衝撃の事実が、10月31日に発表された東電の決算(4~9月期)で明らかになった。膨大な費用がかかる事故処理で赤字決算かと思いきや、なんと3年ぶりの黒字となったのだ。
前年の同じ時期は1662億円の大幅な経常赤字だっただけに、急回復ぶりが目立つ。発表資料によると、コスト削減を行ったというが、その内容が驚きだ。
人件費の削減(183億円)に加え、修繕工事の費用(367億円)を削っているのだ。中でも、原子力発電所の修繕費をいちばん大きく削っており、78億円も減少させた。
さらに国民に電気料金の値上げを押し付けた結果、売り上げは大幅に増えたが、数字を見る限り、稼いだカネを事故処理に投入せずに、利益を確保している。
「現場はどう考えても赤字。適正なコストカットならいいが、やりすぎてかえって危険なのが現状です」(福島第一原発作業員)
これでは、事故処理は遅々として進むはずがない。
東京商工リサーチの友田信男情報本部長が解説する。
「決算をよく見せるために、原発修繕の費用を先送りしている。これはコスト削減とはいえない。やるべき原発の補修が進んでいないとすれば、本末転倒です」
東電は、どうして黒字にこだわったのか。
「借金がある以上、見た目をよくしなければ、融資を継続してもらえなくなるからです」(前出の友田氏)
3期連続の赤字となれば、融資を見合わせる金融機関が出てきてもおかしくはない。12月にはメガバンクを中心に2千億円の融資継続と、社債の償還分3千億円の新規融資を控えている。つまり、事故処理より、東電は会社の存続を優先させたのだ。数字から透けて見える東電の「体質」は、それだけではない。
賠償や除染、汚染水処理などの問題解決にかかる費用は数十兆円にのぼるといわれる。将来的に発生する費用を見積もると、実質的に“経営破綻”している。だが、決算上でその数字を確認することはできない。
元経済産業省官僚の古賀茂明氏がそのカラクリを明かす。
「国際的な会計の常識として、将来発生する費用は合理的に見積もって決算で計上しなくてはいけない。賠償、除染費用などはこれから確実に必要になる。しかし、どれだけかかるかわからないという理由で東電は計上しなかったのです」
廃炉費用は数千億円に上る見込みだが、経産省は東電がこれを「特別損失」として計上しなくて済むように、会計制度の見直しまで踏み込んだ。
「電力会社の会計基準だけは、経産省の規則で変えることができます。実質は“債務超過”に陥っている東電を“粉飾決算”させ、生きながらえさせているのです。かつて銀行の会計基準も旧大蔵省が決めていた。その結果、不良債権が隠蔽され金融危機を招いた。それと同じことが起きている」(前出の古賀氏)
資本主義の論理から言うと、東電は破綻処理をして株主や銀行の責任を問うべきであろうが、そういう責任論をすっ飛ばして、いきなり罪のない国民に負担をさせているのが現状だ。
こんな理不尽がまかり通っていいのか、と東電破綻処理の議論が再び、熱を帯びつつある。
だが、東電が破綻すると、3・4兆円以上の金融機関の債権が吹っ飛ぶという世紀の倒産劇となる。だからこそ、拙速に破綻させると、経済への影響は計り知れない。東電に今も融資する約70行の銀行団はメーンのメガバンクなどを除くと、ほとんどは地方銀行だ。
「融資が焦げ付けば、中小企業への貸し渋りや貸しはがしにつながる可能性があるでしょう」(経済アナリストの新=しん=光一郎氏)
金融機関の体力が奪われれば、金融不安が起き、上向き始めたアベノミクスが腰折れる危険性も出てくる。だが、前出の古賀氏は金融不安の可能性を否定する。
「昨年度のメガバンクの最終利益の合計は約2・2兆円。東電向けの債権の大半がカットされて、最終利益が1年目だけ赤字になったとしても、2年目は黒字確実です。この程度で金融不安が生じることはないし、貸し出し余力がなくなったという銀行には『公的資金を入れましょうか』と言えば、『いえいえ大丈夫』と逃げるに決まっている」
そして実は破綻させたほうが国民にとってメリットがあるという。古賀氏が持論をこう述べる。
「日本航空が経営破綻したときは、金融機関の債権は約9割がカットされた。これを東電に当てはめると約3兆円。3兆円の返済が不要になれば、その分税金投入、すなわち、国民負担は減る。破綻処理をしなければ、国民の税金3兆円分は銀行返済に充てられてしまう。どちらが国民のためになるか自明です」
返済を免除される3兆円で、汚染水対策の費用などは捻出できる上、5年以上は柏崎刈羽原発を稼働させず、電気料金を値上げしなくてもやっていけるという。
「金融機関はリスクを判断し、東電に貸し込んだはず。その責任を取らずに国民に損を押し付けるなんて言語道断。経産省は天下り先である金融機関を守るために東電をつぶさないようにしているとしか思えない」(古賀氏)
一方、金融機関は東電の経営破綻に備え、着々と手を打っているという。
「過去に行った融資を、ファンドを経由して私募債に切り替える複雑な仕組みを使って優先的に守られる債権に順次、置き換えているのです。電力会社の社債などは、電気事業法第37条によって、返済が一般債権よりも優先されて弁済される。銀行側もヒヤヒヤしているのでしょう」(嘉悦大学の小野展克准教授)
それならば、ただちに破綻処理をし、「新生東電」を誕生させるべきではないか。
経営破綻した日本航空をわずか3年で再上場させ、よみがえらせたのは、京セラの創業者、稲盛和夫氏だった。郵政民営化で発足した日本郵政の初代社長にも西川善文・元三井住友銀行頭取が就任した。新生東電にも、こうした財界人の助力が必要になる。
「期待をこめていえば、トヨタ自動車の社長である豊田章男氏。知名度や人脈、経営手腕が求められるからです。米国でリコール問題で裁判になったとき、前面に出て問題を解決した。リーマン・ショック後の業績を回復させた日産自動車のカルロス・ゴーン氏もいい」(前出の友田氏)
慶応義塾大学の金子勝教授は、孫正義氏を推す。
「原発事業を外せば健全な企業。5兆円になるといわれる送配電網を持ち、有力な水力や火力の発電所をたくさん持っている。孫正義氏は『自分がやります』と手を挙げず、誰も引き受け手がなければ、『私がやりましょうか』という舞台をつくるんじゃないかな」
環境系シンクタンクの幹部は、稲盛氏や西川氏の再登板に期待するという。
かつて、「自民党をぶっ壊す」と絶叫した小泉純一郎氏を待望する声も上がる。
「インサイダー」編集長の高野孟氏はこう語る。
「破綻後の東電は、廃炉や自然エネルギーの推進が大きな仕事になる。『原発ゼロ』を唱える小泉氏が社長になれば物語性があって世間の見方も変わるし、社内にも緊張感が生まれ、これまでのようなダラダラ仕事はできなくなるのでは」
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、
「小泉氏には名誉会長や特別顧問のように、実務にかかわらない“象徴”として参加してもらえばいいのではないでしょうか」
では、当の小泉氏はどう思っているのか。
「彼は今、脱原発の国民運動を準備している。近々、某出版社から脱原発に関する本を出版する予定です。今後、さらにメディアへ露出し、持論である脱原発のビジネスモデルを訴えれば、国民運動は春ごろから盛り上がっていくのでは?」(古賀氏)
東電にのり込む日は来るのか……。本誌取材班
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日本国民は政治家になめられてるのとちがう?