気まぐれ何でも館:(566)至福の旅びと(篠弘歌集)(4)
体調のほぐれそめたる午(ひる)どきを古書店に本の黴ぬぐひゐつ
あしたより雨はしぶくに黒猫を死なしめし痕道にのこりぬ
たちまちに花の過ぎにし公園に地震(なゐ)に備ふる避難図を見つ
芽ぶきそめて枯れし二本の白樺にこだはりてゐる中年われが
零時より冴えまさる灯の明るさに錐をもみつつ原稿を綴ず
原稿をラストより読み呑みそむる零時よりわが夜は戦(そよ)げり
外貨稼ぎに駆られて国は病みゐると館長がまづ嘆かひて言ふ
足もとに花束はなし手を伸ぶるレーニンの像いつまでを立つ
エリツィンを推さむと広場に叫ぶデモこの国のひと隊列このむ
己が画きしイコンを塀に掲げ売る聖母の顔は恋人ならむ
藍深き模様かがよふグジェリ焼革命を経てつくりつぎしや
13.11.9 抱拙庵にて。