気まぐれ何でも館:(563)至福の旅びと(篠弘歌集)(1)
篠弘略歴
東京に生まれる。(1933)
東京都立小石川高等学校を経て、早稲田大学第一文学部国文学科卒。
1951年来嶋靖生らと機関誌「早大短歌」を創刊。早稲田大学短歌会、「まひる野」入会。土岐善麿、窪田章一郎に師事。
小学館に入社。百科事典などの編集に携わり、「ジャポニカ」のシリーズで一世を風靡。取締役出版部長、社長室顧問を歴任する。
2000年から2002年まで愛知淑徳大学教授。
2001年から2008年まで、現代歌人協会理事長。
日本現代詩歌文学館館長、宮中歌会始の選者、毎日歌壇選者も務める。
「自然主義と近代短歌」で文学博士(早稲田大学)。
2010年、詩歌人として初めて日本文芸家協会理事長に就任。
花の季の蜂の羽音(はおと)にのぼりくるエレベータのボタンを押せり
受付にオペラの声すミラノより契約に来しアンゼルッチ氏
思はざるゆとりのありて五分前ひとり中央の椅子に坐りぬ
フロアーに崩るる古き語彙カード引越しの夜を拾ひつつ読む
パーティーに遇はなくなりし人思ひ灰皿の殻を数えてをりぬ
生き方のたがふ一人を退職にかく追はしめてかさむ酒量か
おそらくは退職ののち訪(と)ひ来ざる人と測(はか)りて手を握りゐつ
むらぎものいのち論争にきはまりて茂吉いくたり人を殺(あや)めし
この冬のきはまる果てに革命に死する人らは雪に埋もれつ
主義なべて逆転しゆく呻吟にこの寒中は身に沁むまで
13.10.18 抱拙庵にて。