気まぐれ何でも館:(559)美しく愛しき日本(岡野弘彦)(14)
わが靴を磨きをへたる少年の 明るくなごむ 顔を忘れず
白鳥はふたたび空にきたるべし。祈りの心 つつましき民
わたつみの沖より迫る凶(まが)つ神。雄叫(をたけ)びあげて 陸(くが)を責めくる
子も妻も帰らざるまま三月経し 海にむかひて 何を祈らむ
誠なき政治家(まつりごとびと) またひとり 妖言を吐き 東京に去る
憤りひたすら耐へてゐる夜半(よは)も 命絶えゆく牛(うし)馬の声
原爆に敗れし悔いを省みず 生きしわれらを 神怒るなり
一湾の水さかまきて迫りたる 汚泥のなかに 身はほろびゆく
子も親もいづくゆきたる。海原の水逆まきて 家並を呑む
くるしみておのころ島に生きつぎし わが遠つ祖 いま助(す)けに来(こ)ね
富士の山 火を噴く島に生きつぎし 祖々の世のさびしかりけむ
白鳥の去りてむなしき列島の しんしんとして 陽は土に沁む
13.9.21 抱拙庵にて。