首相の五輪プレゼン「何も感じませんでした」 原発避難者の鹿目久美さん、それでも希望が見たい
2013年9月10日(火)5時0分配信 カナロコ by 神奈川新聞
2020年夏の五輪開催地が東京に決まった。懸案とされた東京電力福島第1原発の汚染水問題について、安倍晋三首相はIOC総会のプレゼンテーションで「まったく問題ない」と言い切った。3・11から間もなく2年半、事故は収束をみず、15万人が避難生活を強いられているなかでの「安全宣言」。7歳の長女とともに福島県大玉村を離れ、相模原市緑区に身を寄せる鹿目(かのめ)久美さん(45)は、何を思うのか。
何を感じたか、ですか? 何も感じませんでした。答えになっていないかもしれませんが。
確かに、汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」とか「健康にはまったく問題はない」とか、ウソをつくなと怒る人はいるかもしれません。
でも、語られたことが、私たちの置かれている現実からあまりにかけ離れていて、理解の範囲を超えている。これは空想を語っているのだ、と。そこに感情を向ける気にもならなかったのだと思います。
福島の青空のもと、子どもたちがサッカーボールを蹴っているって?
福島には、東京の10倍の放射線量のなか、子育てをしているお母さんたちがいっぱいいる。心配することに疲れ、もう投げ出したい、でも諦めてはいけない。放射能のことなど忘れたい、でも忘れられない。たとえ外で遊ばせていたとしても、不安と葛藤は消せない。
私のように戻れない人だっています。どこに希望があるというのか。
■ ■
私は娘を被ばくさせてしまった。その実感があります。原子炉建屋の爆発が知らされず、屋外にいたからです。だから、たとえわずかであってもこれ以上は被ばくさせたくなかった。夫を残し、実家に避難すると決めたのは11年夏のことでした。
目に見えない放射能の問題に向き合う当事者の複雑な感情はどう言えば、理解してもらえるでしょうか。
例えば、娘の甲状腺の検査を2年間、受けさせられなかった。心配なら受ければいいのに、と思うでしょう。でも、怖かった。低線量被ばくの影響は判明していないことが多く、娘の体にいつ異変が現れるか誰にも分からない。検査を受け、異常が見つからなくても安心は得られないと分かってもいたから。
福島の人たちの中にも、安全だと言ったのだから責任を持って実行してもらおう、という受け止め方もあります。
それはきっと、私たちの中にある願望なのかもしれません。政治家が口にしたことの責任を全うする国なら、事故後の対応もきちんとなされているはずでしょう。
それでも、五輪が東京で行われることはよかったのかもしれない。
これまで講演に招かれ、自分の体験を話す機会が何度かありました。どうすれば福島の現状を知ってもらい、被災者の苦しみを理解してもらえるだろうかと考えてきた。確かに関心のある人は足を運んでくれる。でも数は限られる。多くの人にとって、ネガティブな話は耳をふさぎたくなるものだということを知りました。
でも、これからは五輪と福島がセットで語られるようになる。明るい話題と一緒に「福島」が耳に入ってくる。心のどこかに引っ掛かってくれる。そうして7年間、福島が話題に上り続け…。
やはり楽観に過ぎるでしょうか。
■ ■
五輪というトピックがなければ、福島の事故は何事もなかったかのように忘れ去られていくだけかもしれない。なかったことにさせられるのが、何より恐れていることです。
それとも五輪のお祭り騒ぎのなか、忘れられていくのでしょうか。福島が置き去りにされると感じている人もいる。安全と認められたから東京に決まったと受け止められれば、ますます不安を口にしづらくなる。
やはり妻と子を避難させ、福島に一人残る友人は開催地決定の前日、交流サイト「フェイスブック」に書きました。
〈憎しみが憎しみを産んでいる内乱みたいなもんなんだと思った…〉
東京が落選し、福島のせいにされるのが恐ろしい。でも、東京の電気をつくるための原発によって被害を受け、なぜ、さらにたたかれなければならないのか、と。とてもおかしな話だけれど、そうした状況が避けられただけでもよかった。
やっぱり、希望は捨てたくないんです。
避難や戻らない判断は正しいのか。家族がばらばらで、中ぶらりんの避難生活を続けることがいいのか。自問自答の毎日です。でも、起きたことは変えられない。一歩でも先に進もうと前を向かなければ、生きてこられなかった。
思えば、2年前、1年前には前向きな気持ちは持てなかった。安倍さんの言葉にショックを受け、傷ついていたに違いない。
五輪開催が決まったのなら、そこに少しでも光が見えればいい。そう考えられるようになったことにいま、気付きます。絶望のなか、だからこそ希望を求めてもがき続けた、それが私たちの2年半という月日でもあるのです。
◆安倍首相のプレゼン要旨
東京は世界で最も安全な都市の一つだ。それは今でも、2020年でも同じだ。懸念を持つ人もいるかもしれないが、福島第1原発について皆さんに約束する。状況はコントロールされている。
私たちは決して東京にダメージを与えるようなことは許さない。オリンピックが安全に行われることを保証する。
(汚染水問題は)結論から言って、まったく問題ない。新聞のヘッドラインではなく、事実を見てほしい。汚染水による影響は原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている。
近海でモニタリングしているが、数値は最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。わが国の食品や水の安全基準は世界でも最も厳しい基準だ。
健康問題については今までも、現在も、将来もまったく問題はないと約束する。さらに完全なものにするため、抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決定し、すでに着手している。実行していく事を約束する。
私はかつて被災地を訪問し、一人の少年と会った。彼は、被災地を訪れた外国人のサッカー選手にもらったボールを宝物のように、自慢げに私に示した。ボールは彼にとって未来への希望だ。
今この瞬間にも福島の青空の下、子どもたちはサッカーボールを蹴りながら、復興そして未来を見つめている。私は日本の総理大臣として彼らの安全と未来に、責任を持っている。日本にやって来るアスリートの皆さんにも、責任を完全に果たすと約束する
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複雑な思いが伝わってきます。福島の安全化を優先させての東京五輪であって欲しいです。離れてるから大丈夫というのは無しにして欲しいです。
2013年9月10日(火)5時0分配信 カナロコ by 神奈川新聞
2020年夏の五輪開催地が東京に決まった。懸案とされた東京電力福島第1原発の汚染水問題について、安倍晋三首相はIOC総会のプレゼンテーションで「まったく問題ない」と言い切った。3・11から間もなく2年半、事故は収束をみず、15万人が避難生活を強いられているなかでの「安全宣言」。7歳の長女とともに福島県大玉村を離れ、相模原市緑区に身を寄せる鹿目(かのめ)久美さん(45)は、何を思うのか。
何を感じたか、ですか? 何も感じませんでした。答えになっていないかもしれませんが。
確かに、汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」とか「健康にはまったく問題はない」とか、ウソをつくなと怒る人はいるかもしれません。
でも、語られたことが、私たちの置かれている現実からあまりにかけ離れていて、理解の範囲を超えている。これは空想を語っているのだ、と。そこに感情を向ける気にもならなかったのだと思います。
福島の青空のもと、子どもたちがサッカーボールを蹴っているって?
福島には、東京の10倍の放射線量のなか、子育てをしているお母さんたちがいっぱいいる。心配することに疲れ、もう投げ出したい、でも諦めてはいけない。放射能のことなど忘れたい、でも忘れられない。たとえ外で遊ばせていたとしても、不安と葛藤は消せない。
私のように戻れない人だっています。どこに希望があるというのか。
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私は娘を被ばくさせてしまった。その実感があります。原子炉建屋の爆発が知らされず、屋外にいたからです。だから、たとえわずかであってもこれ以上は被ばくさせたくなかった。夫を残し、実家に避難すると決めたのは11年夏のことでした。
目に見えない放射能の問題に向き合う当事者の複雑な感情はどう言えば、理解してもらえるでしょうか。
例えば、娘の甲状腺の検査を2年間、受けさせられなかった。心配なら受ければいいのに、と思うでしょう。でも、怖かった。低線量被ばくの影響は判明していないことが多く、娘の体にいつ異変が現れるか誰にも分からない。検査を受け、異常が見つからなくても安心は得られないと分かってもいたから。
福島の人たちの中にも、安全だと言ったのだから責任を持って実行してもらおう、という受け止め方もあります。
それはきっと、私たちの中にある願望なのかもしれません。政治家が口にしたことの責任を全うする国なら、事故後の対応もきちんとなされているはずでしょう。
それでも、五輪が東京で行われることはよかったのかもしれない。
これまで講演に招かれ、自分の体験を話す機会が何度かありました。どうすれば福島の現状を知ってもらい、被災者の苦しみを理解してもらえるだろうかと考えてきた。確かに関心のある人は足を運んでくれる。でも数は限られる。多くの人にとって、ネガティブな話は耳をふさぎたくなるものだということを知りました。
でも、これからは五輪と福島がセットで語られるようになる。明るい話題と一緒に「福島」が耳に入ってくる。心のどこかに引っ掛かってくれる。そうして7年間、福島が話題に上り続け…。
やはり楽観に過ぎるでしょうか。
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五輪というトピックがなければ、福島の事故は何事もなかったかのように忘れ去られていくだけかもしれない。なかったことにさせられるのが、何より恐れていることです。
それとも五輪のお祭り騒ぎのなか、忘れられていくのでしょうか。福島が置き去りにされると感じている人もいる。安全と認められたから東京に決まったと受け止められれば、ますます不安を口にしづらくなる。
やはり妻と子を避難させ、福島に一人残る友人は開催地決定の前日、交流サイト「フェイスブック」に書きました。
〈憎しみが憎しみを産んでいる内乱みたいなもんなんだと思った…〉
東京が落選し、福島のせいにされるのが恐ろしい。でも、東京の電気をつくるための原発によって被害を受け、なぜ、さらにたたかれなければならないのか、と。とてもおかしな話だけれど、そうした状況が避けられただけでもよかった。
やっぱり、希望は捨てたくないんです。
避難や戻らない判断は正しいのか。家族がばらばらで、中ぶらりんの避難生活を続けることがいいのか。自問自答の毎日です。でも、起きたことは変えられない。一歩でも先に進もうと前を向かなければ、生きてこられなかった。
思えば、2年前、1年前には前向きな気持ちは持てなかった。安倍さんの言葉にショックを受け、傷ついていたに違いない。
五輪開催が決まったのなら、そこに少しでも光が見えればいい。そう考えられるようになったことにいま、気付きます。絶望のなか、だからこそ希望を求めてもがき続けた、それが私たちの2年半という月日でもあるのです。
◆安倍首相のプレゼン要旨
東京は世界で最も安全な都市の一つだ。それは今でも、2020年でも同じだ。懸念を持つ人もいるかもしれないが、福島第1原発について皆さんに約束する。状況はコントロールされている。
私たちは決して東京にダメージを与えるようなことは許さない。オリンピックが安全に行われることを保証する。
(汚染水問題は)結論から言って、まったく問題ない。新聞のヘッドラインではなく、事実を見てほしい。汚染水による影響は原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている。
近海でモニタリングしているが、数値は最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。わが国の食品や水の安全基準は世界でも最も厳しい基準だ。
健康問題については今までも、現在も、将来もまったく問題はないと約束する。さらに完全なものにするため、抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決定し、すでに着手している。実行していく事を約束する。
私はかつて被災地を訪問し、一人の少年と会った。彼は、被災地を訪れた外国人のサッカー選手にもらったボールを宝物のように、自慢げに私に示した。ボールは彼にとって未来への希望だ。
今この瞬間にも福島の青空の下、子どもたちはサッカーボールを蹴りながら、復興そして未来を見つめている。私は日本の総理大臣として彼らの安全と未来に、責任を持っている。日本にやって来るアスリートの皆さんにも、責任を完全に果たすと約束する
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複雑な思いが伝わってきます。福島の安全化を優先させての東京五輪であって欲しいです。離れてるから大丈夫というのは無しにして欲しいです。