僕がいっさい図面を見ないから、代官山 蔦屋書店ができた
カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役社長・増田宗昭さん(1)
川島 蓉子
2013年9月6日(金)
日本製のモノが、サービスが売れない。性能はいいのに。機能も充実しているのに。壊れないのに。親切なのに。多くの日本企業が直面している、「いいモノをつくっているのに売れない」問題。
なぜ、売れない? それは、日本製品の多くが、かっこよくないから。美しくないから。カワイくないから。気持ち良くないから。つまり、デザインがなっていないから。
どうして、デザインがなっていない? それは、経営者がデザインのことをわかってないから。つまり、経営者が「ダサい」から。だから、デザインをマネジメントできない。
経営者がダサいと、日本企業はつぶれる。では、どうすれば、デザインをマネジメントできるのか? どうすれば、かっこいいを、美しいを、カワイイを、気持ちいいを、商品化できるのか? どうすれば、ダサい経営から、デザインできる経営に転換できるのか? ifs未来研究所所長の川島蓉子が、時代を切り開く現役経営者やデザイナーにずばり切り込んで、その答えを探ります。連載第1弾はカルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役社長・増田宗昭さんにご登場いただきます。
川島:増田さん、この連載のタイトルは『ダサい社長が日本をつぶす』なんです。
増田:うわ、いきなり、おっかないタイトルだ。僕で、いいの?(笑)
川島:もちろん! 日本の企業がつくるものって、最近かっこいいものが本当に少ないじゃないですか。性能はいい。つくりもいい。なのにデザインがぱっとしない。元気がない。なぜだろう、って考えたら、実は経営者がダサいからなんじゃないの? と思い至りまして。そこで「かっこよさ」をビジネスで体現するにはどうしたらいいのか、「かっこいい社長」に秘訣を聞いていこうというのが、この連載の趣旨です。
増田:それ聞いたら、ますます自信がなくなってきた。
川島:何言っているんですか。増田さんがつくった代官山の蔦屋書店(2011年12月オープン)、ものすごくかっこいいじゃないですか?
増田:それはおおきに(笑)
川島:本屋さんが「かっこよく」、「きもちいい」っていうのは、ありそうでなかったコンセプトです。日本の企業って、どうも「かっこいい」ということを低く見ていた気がするんです。しょせん外見じゃないの、と。
増田:男は見た目じゃない、中身だ、と。
川島:それと同じ。でも、そんなマッチョな発想が、日本の製品やサービスから、かっこいいとか、きれいとか、素敵をなくしちゃったと思うんですよね。今売れているモノやサービスは「かっこいい」ものが多いのに。
増田:なぜ日本の企業がダサいのか。なぜ日本の社長がダサいのか。僕、一発でわかりますよ。
川島:ずばり、何ですか?
増田:日本の社長のほとんどはね、会社一筋、仕事一筋になっちゃうから、オーナー経営者もサラリーマン社長も。つまり「会社=自分」になっちゃう。すると、肝心の市場やお客さんが見えなくなるのよ。そうなるとね、会社と市場の関係、会社とお客さんの関係を勘違いし始めてしまうというわけ。
川島:こんなに仕事でがんばってる俺が間違えるわけない、と。客観的な視点がなくなってしまうということですか。
増田:そうそう。で、そういう社長は万能感にとらわれて、なんでも自分で決めようとする。趣味を押し通そうとする。でね、自分のところの製品やサービスの「かっこいい」「かっこわるい」の判断も自分でやろうとしちゃうわけよ。でも、それが間違い。社長の仕事は「経営」でしょ。「かっこいい」を実際につくるのは、デザイン部門の仕事、社長にできるわけがない。
ひとに任せればいい
増田 宗昭(ますだ・むねあき)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社代表取締役社長兼CEO
1951年生まれ。大阪府枚方市出身。83年、「蔦屋書店(元・TSUTAYA枚方駅前本店)」を創業。85年、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社設立。2011年12月、大人たちに向けた新しい生活提案の場として、東京・代官山に「代官山 蔦屋書店」をオープン。TSUTAYAやTカードなど「カルチュア・インフラ」を創りだす企画会社の経営者として、奔走している(撮影/大槻純一)
川島:じゃ、どうすればいいんですか?
増田:ひとに任せればいいのよ。
川島:え、本当ですか?
増田:だって、俺がそうだもん。たとえばさ、さっき話に出た代官山 蔦屋書店。あそこの設計図、いっさい見てないのよ。完成してはじめて、「ああ、こうなったのか」と感激した。
川島:本当ですか! てっきり増田さんが微に入り細に入りデザイナーや建築家に自分の趣味を細かく説明して、図面に口を出して、現場にも入って……。
増田:やってないやってない。そんなことやったら、それこそダサい空間になっちゃう。図面も見ない。どんな素材を使うかもチェックしない。どんな色になるのかも口を出さない。だってさ、チェックするっていうのは、俺のフィルターをかけちゃうってことじゃない。そんなの最悪だよ。
川島:以前からそういう考えだったんですか?
増田:実はね、代官山に蔦屋書店をつくる前に、軽井沢に個人の別荘をつくったの。それが練習になったかな。やっぱりいっさい図面を見ずに、途中で口出しせずに、建築家に素敵な空間をつくってもらった。
川島:じゃあ、増田さんは、建築家やデザイナーにまるっきりお任せ、なんですか?
増田:そうじゃない。ひとつだけきっちり伝えないといけないことがある。それは、コンセプト。
川島:コンセプト。
増田:コンセプト。別荘だったら、なぜ俺は別荘がほしいんだろう、つくりたいんだろう。そもそも、別荘って何なんだろう。別荘って人にとってどんな存在なんだろう。別荘ができたら何ができるんだろう? そんな具合に、「別荘についてのコンセプト」を建築家と、毎週末禅問答したわけです。
「選ぶ」のが俺の最大の「仕事」
川島:なるほど。施主や経営者がやるべきは、「コンセプト」をつくること。そしてその「コンセプト」を、実際にデザインしたり図面をひいたりするプロに伝えて、価値観を共有すること、ってわけですね。
増田:うんうん。
川島:で、実際にかたちにするときは、プロである建築家やデザイナーに任せちゃう。でも、それって、増田さんがデザインのプロ、建築のプロを全面的に信頼しているからできることじゃないですか?
増田:もちろんそうです。だから、「建築家を選ぶ」のが俺の最大の「仕事」なわけ。実際に線を描くのはその建築家の仕事。失敗したら、その建築家を選んだ俺が悪い。選んだからには信頼しなきゃ。途中で口を出したら、選んだことにならないですから。
川島:それって、まさに「経営」ですね。
以下略
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コンセプトねぇ~。数学者は個人経営ですが、岡潔は構想のない数学を嫌ったそうです。