気まぐれ何でも館:(554)美しく愛しき日本(岡野弘彦)(9)
わが友らつひに帰らず。神渡(みわ)りの湖(うみ)のとよみのまぼろし 聴こゆ
絶えだえに蟋蟀(いとど)の声のほそり鳴く 故郷(くに)の草生に ゆきて死なむか
声あげて道にあそべる子らもなし。さびしき村を 一日めぐりぬ
子ら六人(むたり) 今日を最後と歌ふゆゑ われもうたへり 明治の校歌
過疎すすむ 山の七つの村を合はせ 子ら百人の小学校建つ
ゆたかなる未来を開く者のため われはつくりぬ。あらた世の歌
校庭につづく草生に 群れきつつ 子連れの鹿のあそぶたのしさ
八十(やそ)すぎて 耳うときわれをめぐり歌ふ かなしきまでに 澄む 子らの声
み熊野は 帝の守り 武者輩(ばら)の近づくことを 忌みたまふなり
十郎より五郎に心ひかれゐる 少女をつれて 曾我の里ゆく
鎌倉の谷戸をうづむる彼岸花。眼に顕(た)つ夜はを 眠らざりけり
鬼の住む沖の小島を 明け暮れに恋ふるこころは 人しらざらむ
13.8.16 抱拙庵にて