デトロイト破綻は米国バブル崩壊への序章 アベノミクスは「飛んで火に入る夏の虫」?
(週刊朝日 2013年8月16-23日号配信掲載) 2013年8月7日(水)配信


「自動車の都」米国デトロイト市の“破綻(はたん)”が世界中に波紋を広げている。負債総額は180億ドル(約1兆8千億円)で自治体の財政破綻としては米国史上最大だ。オバマノミクス(オバマ大統領の経済政策)の劣化コピーにすぎないアベノミクスの行く末に暗雲が立ち込めはじめた。
ブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局 山広恒夫

 デトロイト市の財政破綻は、自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)の本社ビルを包むようにして屹立(きつりつ)する同市中心部の超高層ビル群を見る限り、想像もつかない。

 一方、こうした豪華な外観の高層ビル群を取り囲むようにして、崩れかかったビルや住人のいなくなった廃屋の混在する荒涼たる市街地が広がっている。

 この強烈なコントラストはいったい何を意味するのだろうか? 謎解きを進めると、米国が直面する危機の本質が見えてくる──。

 デトロイト市は「自動車の都」から米国全土で進む「貧富の格差拡大」の象徴へと変貌を遂げたように見える。この貧富の差の拡大に、米国経済に潜む病根が凝縮されている。

 内国歳入庁(日本の国税庁に相当)の資料によると、2010年の米国全世帯の個人所得は前の年に比べて2・3%増加したが、所得上位わずか1%の富裕世帯が全世帯の所得増加分のうち、なんと93%を占めた。一方で、全体の80%の世帯は所得の減少に見舞われているのである。

オバマ政権による大規模財政出動と中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が続ける大規模金融緩和は、史上最悪のバブル醸成につながっていく。

 この資産バブル膨張の恩恵は、当然のことながら巨額の資産を保有する富裕層に集中する。しかし、このバブル膨張も、そろそろ限界に差し掛かってきた。これが破裂すれば08年のリーマン・ショックをはるかに凌ぐ経済危機がやってくる。

 筆者は6月末に『2014年、アメリカ発 暴走する「金融緩和バブル」崩壊が日本を襲う』(中経出版)を上梓。週刊朝日7月19日号にその概要が紹介された直後にデトロイト市破綻のニュースが飛び込んできた。

 危険水域に向かい、確実に水量は増しているのだ。

 政治の混迷と利益至上主義によって歪められた米国型資本主義は、一部の勝ち組への富の集中と、一般市民の困窮化を加速させた。 デトロイト市も手をこまぬいてきたわけではない。1970年代にはGM本社ビルを中心とするオフィス街を再開発し、過去の栄光の復活を願って「ルネサンス(復興)・センター」と名付けた。

 しかし、こうした再開発もそこで生活する市民の目線からではなく、企業の立場から進められたため、格差社会が一段と先鋭化していくことになる。

 自動車メーカー各社は生産設備の大型化とともに、工場を拡張する必要が生じ、デトロイト市内から郊外に移転。さらにグローバリゼーションの波に乗って海外に進出している。

 現在、デトロイト市内で働く自動車会社の職員は2万7千人で、最盛期の10分の1程度にすぎない。同市の失業率は10%を超えている。市当局が自動車産業の変容にともなって、変化していくことを怠ったのが衰退化の最大の要因である。

 こうして職を失った市民が困窮化して、治安も悪化。身の危険を感じた中間層が郊外へと脱出していくにつれて、さらに空洞化が進む。当然のことながら市の税収は先細りとなり、治安維持費など歳出の切り詰めに追い込まれ、治安の悪化に拍車がかかるという悪循環に陥っているのである。

 こうして貧困状態に放置される市民にはアフリカン・アメリカンと呼ばれる黒人が圧倒的に多く、デトロイト市の全人口のうち86%までを黒人が占めるほどになった。こうした傾向は程度の差こそあれ全米でみられる現象だ。

 たとえば首都ワシントンD.C.。ワシントンは八つの地区に分かれているが、南東部の第8区の失業率はなんと22・2%にも達している。第7区は14・8%、第5区は12・0%と、8区のうち3区まで失業率は2ケタだ。これらの地区は、黒人や、中南米からの移住者を意味するヒスパニック系の人々が多く住む。高額所得者が多い北西部の第3区の失業率は2・3%にすぎない。

 オバマ氏が初の黒人大統領として執務を続けるお膝元の首都ワシントンでこの有り様である。

 ワシントンでも失業率が2ケタ以上に達している地区は治安が極端に悪く、夜間の外出など自殺行為に等しい。第5区に隣接するメリーランド州立大学の周辺でさえ、夜間外出は危険を伴う。

 7人の学生が集団で行動すれば大丈夫とばかりに飲み会から帰宅途中、その倍近い若者のグループに取り囲まれ、暴行を受けて金銭を奪われるという事件も発生している。

 こうした事件は日常茶飯事であり、マスメディアは殺人事件にならなければ、ほとんど報道もしない。同校の学生たちは同校警備部門とインターネットで結ばれている緊急連絡網を通じて事件を知ることができた。至急報には犯人の特徴として、十数人すべて身長6・2フィート(約188センチ)を超すアフリカン・アメリカンと記されていた。「ワシントン・ポスト」紙はデトロイト市の破綻について、「一つの産業に依存しすぎたことと、人種差別とそれに伴う人種間の軋轢(あつれき)がとりわけ大きなダメージを加えた」と書いている。

 米国労働省が毎月発表する全米の失業率をみても、黒人労働者やヒスパニック系労働者が過酷な状況に置かれていることがわかる。

たとえば黒人の失業率は7月時点で12・6%と、全米の7・4%を5・2も上回っている。次いでヒスパニックが9・4%。その一方で、白人は6・6%と平均値より0・8ポイント低い。白人の失業率は、FRBが事実上のゼロ金利解除(初回利上げ)の目安としている失業率6・5%をほぼ達成しているのである。雇用の改善を図るためには黒人とヒスパニック系労働者の失業問題を解決しなければならないのは明らかだ。これはすぐれて政治・社会問題であり、本来なまくらな金融政策では対応できない。

 FRBはこの失業率の引き下げを目指して金融政策を全開状態にしている。

 だが、道具を間違えているとしか言いようがない。 こうしてFRBが大量に供給するマネーは株式や債券など資産価格を押し上げ、富裕層をさらに富ませる一方で、インフレを招き、中低所得者層を圧迫していくからだ。

 デトロイト市が負っている180億ドルの債務をはじめ、様々な問題は、どれも米国経済が抱える「諸問題の縮図」といえる。同市が抱える債務の約半分は退職者年金と高齢者医療保険の財源不足分だ。

 一方、米国全体の年金および高齢者医療保険基金の不足額は、いずれ100兆ドル(1京円)を超すといわれている。連邦政府は米国債の大量発行により、この不足額を補わざるを得なくなる。本丸は米国債にありといったところか。

 指標となる期間10年の米国債利回りは、1年前の7月24日に1・38%で底を打った後、上昇トレンドに転じている。

 FRBによる追加米国債購入も金利を押し下げる効果がなくなってきた。

 投資家が米国債の先行きに警戒を強めてきたからである。FRBのバーナンキ議長が6月に米国債購入停止への道筋を示唆しただけで、市場は動揺をきたし、7月5日に同利回りが一時2・74%まで急騰。

 さながら、米国債バブル崩壊への予行演習といった様相を呈していた。

 市場の“反乱”に驚いたFRBは7月末、連邦公開市場委員会(FOMC=日銀の金融政策決定会合に相当)で量的金融緩和と事実上のゼロ金利政策を継続する方針を、より明確にする事態に追い込まれた。

 米国連邦政府の債務残高は既に16兆7千億ドル(約1670兆円)にも膨れ上がっている。

 連邦政府はこのところ、政府系住宅公社から先に注入した公的資金の返済を受けて一息ついているが、債務の膨張は止まらない。

 今年末にかけて連邦政府に課されている債務上限を引き上げなければ、デフォルト(債務返済不履行)に陥ってしまう。

 税収だけで歳出を賄え切れないところはデトロイト市も連邦政府も変わりない。違うところは、連邦政府には貨幣を発行できるFRBが付いていることだろう。現在のようにFRBが米国債を買っている限り、資金調達を心配する必要がないからだ。しかし、それにも限度がある。

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FRBとは日銀と違い、単なる民間銀行です。FRBが米国債を買っているというのは、ドル札を刷って政府に渡しているということです。金融緩和の実態なんですね、前から言われてたことですが。一種の紙をお金にかえる錬金術です。そんなことがいつまでも続くはずは無いと思います。

お金持ちがどんどんお金持ちになり、貧富の格差が広がるのは1%の人が都合のいい世の中になっていくことを狙っている支配者層の思うつぼなんですね。政府、マスコミ、など一体になってその手先に少なくとも結果的になっています。

ところで日本ですが、白川さんが日銀総裁の時は積極的金融緩和はやらなかったんです。慎重派ですから。それで良くはならなかったし、極端に悪くもならなかったといえます。黒田総裁はアベノミクス推進者で積極的金融緩和をしつつあるのですが、カンフル剤的に効果があったようです。しかし中長期的に見るとどうなるか分かりません。やるなら日本の分かち合いの精神を忘れないでアメリカとはひと味違うやり方でやってもらいたいです。

別のニュースでは生活保護所帯数が最高を更新したそうです。働ける人が働かず、そういう人に政府がお金をあげてたらどういうことになるか、ですね。政府のお金と言っても要するに税金で、使うべき所に使えなくなるということなんですがね。生活保護費にまわすより、国土美化の仕事でも何でもためになる仕事を創出して働いてもらう、最初はバリバリ働けなくてもですね、特殊な人以外は日本人は働くのが好きなんですから。