気まぐれ何でも館:(550)美しく愛しき日本(岡野弘彦)(5)
  
 折口が釈(と)くはやさしきをみな神。古事記(ふることぶみ)の言のたのしさ
  
 淡島も蛭子(ひるこ)もそこに遊びゐよ。蒼うなばらは命ゆたけし
  
 生みいでし淡路も阿波も うづ潮の八重の潮路に 遠かすむなり
  
 生きの緒の始めのいのちはぐくめる 母の胞(え)こひし。身の焦(や)くるまで
  
 世の創めの 女男の訣れはすさまじき。言の葉すらや 火(ほ)むらだちくる
  
 ただひとり 妻のなき世を生きつぎて いざなきの神や さびしかりけむ
  
 みそぎするいざなきの身に成りいでし 三柱の神 おのも畏き
  
 五体より八十種(たな)つもの取りいでて 民をやしなふ姫神あはれ
  
 後の世のやまとたけるも 業平も おもかげの母を追ひて さすらふ
  
 神のつま伊勢の齋(いつき)の宮恋ひて 終(つひ)の旅ゆく をのこらの影
  
 神かけて世々のをとめが詠みいでし 歌のあはれは人つたへけり
  
13.7.20 抱拙庵にて。