日本の機械が北の密輸からシリアで殺人兵器に、ネット情報より、ミクシ日記 | 馬頭観音のブログ
- 日本の技術が北朝鮮経由で、シリアの虐殺に悪用されていた
(週刊朝日 2013年7月19日号配信掲載) 2013年7月10日(水)配信
ジャーナリストの山本美香さん(当時45)が昨年亡くなるなど、中東シリアの内戦は現在も泥沼化している。アサド独裁政権は反体制派を弾圧するため、化学兵器まで使用しているという。その製造に使う機材がなんと、日本から北朝鮮へ“密輸”され、シリアに持ち込まれたものである可能性が浮上している。
軍事ジャーナリスト 黒井文太郎
ロンドンを拠点とする人権団体「シリア人権監視団」は6月下旬、2011年3月以来のシリアでの死者が、10万人を超えたと発表した。
しかも、この内戦では、強力な化学兵器「サリン」が使用され、多数の死傷者が出ていたことが判明してきた。米英仏の政府は今年4月から6月にかけ、それぞれの情報機関の詳細な調査・分析により、「政府軍が使用した」と断定。
アサド政権側は否定しているものの、国連による現地調査チームの受け入れを拒否していることから、サリン使用が政府軍によるものであることは明白だ。
では、アサド政権はどうやって、こうした化学兵器の製造技術を手にしたのだろうか?
それに対し、韓国紙「朝鮮日報」(6月15日付)が非常に興味深いスクープ記事を掲載した。
北朝鮮が1990年代半ばから、シリアに化学兵器関連の技術者を派遣し、薬剤の合成方法や化学兵器散布用の弾頭製造技術を提供していたというのだ。
しかも、同記事によれば、北朝鮮は最近、真空乾燥炉をシリアに輸出したという。ここでいう真空乾燥炉とは、正式には真空凍結乾燥機もしくは真空凍結乾燥装置と呼ばれているもので、物質を凍結させた状態で水分だけを蒸発させて乾燥させる、いわゆるフリーズドライのための専用機材である。
これは、成分に影響を与えずに物質を乾燥させたい場合に使うもので、たとえばインスタント食品やビタミン剤など、主に食品業界や製薬業界などで幅広く使われている。
1台40万~50万円程度のもので、日本でも複数のメーカーが製造しているが、生物化学兵器の製造に技術利用できるため、実はその輸出に経済産業省が厳しい規制をかけている。
大量破壊兵器開発に転用可能なすべての機材の輸出には経産相の許可を義務づける、外為法の「キャッチオール規制」の対象となっているのだ。
シリア政府としては、化学兵器製造のためにぜひとも欲しい機材だが、もちろん国際的にも輸出入が厳しく規制されていて、容易に入手することはできない。そこで、秘密裏に北朝鮮から入手したというのだ。
真空凍結乾燥機日本から“密輸”
「現在、シリア政府軍が使用しているサリンは、派遣された北朝鮮の技術者の指導の下、北朝鮮から導入した真空凍結乾燥機を使って製造されたものとされています」(韓国外交筋)
だが、北朝鮮も最初から真空凍結乾燥の技術を持っていたわけではない。
では、彼らはどうやってその技術を会得したのか?
実は、北朝鮮は02年に、日本から真空凍結乾燥機を“密輸”している。つまり、シリア政府軍が持つ化学兵器製造技術の一部は、日本から北朝鮮を経由してシリアにもたらされたものと考えられるのだ。
ここで日本から北朝鮮へ真空凍結乾燥機が渡った経緯を振り返ってみよう。
まずは05年3月、山口県下関市の韓国籍のリサイクル業者が、駐輪場から自転車300台を盗んだとして逮捕された。北朝鮮に輸出するのが目的だった。ところが、この事件の捜査の過程で、ある情報がキャッチされる。
真空凍結乾燥機が秘密裏に北朝鮮に輸出されていたという情報だった。
この事件を捜査していた山口・島根両県警は06年2月、不正輸出に関わった外為法違反容疑で、東京・湯島の日朝貿易専門商社Aと、同じく東京の貿易会社のB商事、それにその関係先を強制捜査。同年8月、A社幹部を逮捕した。
捜査当局の調べによると、真空凍結乾燥機1台(当時50万円相当)が横浜港から出荷され、台湾経由で北朝鮮に不正輸出されたのは02年9月のこと。
北朝鮮の貿易会社から注文を受けたA社が、B商事に輸出の仲介を要請。
B商事から紹介を受けた台湾の商社が、日本のメーカーの台湾の代理店を通じて真空凍結乾燥機を購入し、北朝鮮企業に引き渡した。この際、A社はB商事などに手数料を支払った。
なお、A社に発注した北朝鮮の貿易会社は、そもそも平壌の商社「HELM平壌」から注文を受けていた。この会社は北朝鮮の貿易会社「朝鮮綾羅(ルンラ)888貿易」の直属だった。同社はもともと人民武力部のダミー商社といわれていたが、現在では金正恩ファミリーの個人資産を管理する外貨獲得工作の大元締機関「39号室」の下にあるものとされている。
すなわち、同社はまさに金ファミリー直系の会社だったのである。
ちなみに、朝鮮綾羅888貿易には横田めぐみさんの夫が勤務していた可能性が高い。
この夫は以前、党35号室(現・軍偵察総局)という対外工作機関の職員だったが、二人の娘が記者会見で「父はルンラという会社で働いている」と証言していたからだ。
また、77年に能登半島の宇出津(うしつ)岸で拉致されたとされる久米裕さんの事件で国際手配中の金世鎬が、かつて朝鮮綾羅888貿易の代表団に紛れて来日したこともあった。金世鎬も35号室の工作員である。
さらに、「97年頃の九州地方の覚醒剤押収事件で、北朝鮮側を仕切っていたのが朝鮮綾羅888貿易だった」などという情報もあった。いずれにせよ同社は貿易会社というより、特殊工作機関のようなものだと考えていい。
ところで、逮捕されたA社幹部は当時の報道によると、調べに対し、「注文を受けたとき、『烽火(ポンファ)診療所で軍部が生物兵器などの研究開発に使う』と聞いた」と供述していたという。
烽火診療所は金ファミリーや党高級幹部が診療を受ける平壌市内の特別病院だが、軍の研究施設も併設された機関とみられている。
しかも、この真空凍結乾燥機の輸出とほぼ同じ時期に、電気攪拌機やガンマ線測定機などの機材が日本から輸出され、烽火診療所内の研究施設に搬入されていたこともすでに判明している。
これらの情報からこの真空凍結乾燥機は一般的な工業用というよりも、やはり生物化学兵器の開発、もしくはその研究用に使用されたと考えるべきだろう。
時間軸を整理すると、まずは02年に日本の真空凍結乾燥機が、北朝鮮の工作機関によって北朝鮮に“密輸”され、軍の生物化学兵器開発の部門に回された。
そこでその技術が“研究”されるとともに、同様の性能の真空凍結乾燥機がコピー製造され、それがシリアへ売却されたとみるべきだろう。
つまり、日本の技術が不正に北朝鮮に盗まれ、それが回りまわって現在、シリアでの“虐殺”に悪用された可能性が高いのである。
東西の“独裁国家”の犯罪に怒りを禁じ得ない。
くろい・ぶんたろう 1963年生まれ。月刊「軍事研究」記者、「ワールド・インテリジェンス」編集長などを経て軍事ジャーナリストに。著書に『ビンラディン抹殺指令』(新書y)、『北朝鮮に備える軍事学』(講談社+α新書)など
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独裁国家の犯罪もさることながら、日本の取り締まり部署にも大いに責任があると思いますね。

