中国人民銀、金融危機回避を宣言 引き締め一転
(2013年6月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国国内での金融危機発生を何としても回避する。中国人民銀行(中央銀行)のこうした姿勢がいよいよ明らかになった。
この2週間、資金供給を絞って金融システムを資金不足に追い込み、銀行の自浄作用を促してきた人民銀が、25日になって強硬姿勢から大きく転じた。
銀行へ資金供給を明らかにした中国人民銀行(25日、北京)=ロイター
従来とは一転し、資金繰りの苦しくなったいかなる金融機関にも資金を供給すると約束したのだ。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が昨年打ち出した「無制限」の国債購入をほうふつとさせる支援策だ。さらに、具体的な名前は伏せながらも、既にそうした支援を実行したと明かした。
先週、中国の市場金利が2桁に急上昇して銀行間市場が機能停止に陥ったため、中国版リーマンショックが近いのではないかとささやかれた。しかし、人民銀が銀行支援の方針を宣言したため、金融機関の大きな破綻や金融システムがメルトダウンする事態は避けられる見通しとなった。
「市場金利は週末にかけて大幅に下がり、金融市場や実体経済は落ち着くだろう」とオーストラリア・アンド・ニュージーランド(ANZ)銀行の劉利剛氏は話す。
■債券市場の不安定を懸念
人民銀の方針転換の引き金となったのは市場の混乱だ。株式市場は先週一週間で10%下落した。25日には一時さらに6%下げたが、中銀が支援に乗り出すとの噂が広まり、終値はほぼ横ばいに戻った。
中国政府内では債券市場が不安定になることへの懸念が強まったとみられる。
さらに、中国の経済成長率が予想以上に落ち込みかねないという不安もあった。専門家は以前から、過去10年間の年率10%という成長ペースが徐々に鈍化し、数年後には7.5%になると予想していた。
今回の資金逼迫により、6%も現実味を帯びるとの見方がアナリストの間で浮上した。これは中国政府にとって受け入れがたい水準だ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの陸挺氏によると「現在の成長率は、新指導部が容認できると示唆した下限に近い」からだ。
■「影の銀行」対策の狙いも
市場や経済に加え、水面下ではもう一つの要因が働いている。人民銀が金利上昇を容認したのには「影の銀行(シャドーバンキング)」対策という大きな狙いがあった。信用拡大を制限することで、銀行の簿外融資のまん延に歯止めをかける意向だった。
しかし実際には、意図したのと全く逆の効果が現れた。現金不足に陥った銀行は、預金者を集めるために「理財商品」と呼ばれる高リスク・高金利の金融商品を大量に売り出したのだ。
調査会社CNベネフィットによると、先週、理財商品を販売する銀行の数は18%増え、同商品の販売件数は67%増加した。
市場が逼迫して以来、理財商品の利回りが徐々に上昇していることが各種の調査でわかった。
CNベネフィットの調べでは、先週4.2%だった平均利回りが約4.5%まで上昇したという。
一方、フィナンシャル・タイムズ紙が今週調査した8行では、いっそう急激な金利上昇が見られた。どの銀行も5.4%以上の短期金融商品を販売し、6%を超えるものも複数あった。これは中国の指標となる預金金利のほぼ2倍に相当する。
市場金利の上昇を転嫁していることも一因だが、主な理由は新規顧客を獲得し、それによって必要な流動性を確保することだとアナリストは指摘する。中堅の江蘇銀行のマネジャーは「銀行はどこも必死だ」と語った。
市場にあふれる新商品は金融システムの他部門を侵食している。スペイン大手銀BBVAの中国担当エコノミストは「人々は株式から資金を引き上げ、理財商品を買っている」と指摘する。
人民銀が銀行の保護を明言したことで、簿外商品を通じて現金を調達する動きはいくらか沈静化するだろう。しかし、中国が抱える「影の銀行」問題は未解決のままだ。
By Simon Rabinovitch
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中国が何とか切り抜けなければ、リーマンショック以上の金融危機になるかもしれないし(その可能性大)、一時的にこのところ何故か安定している日本国債が買われるかもしれないが、金融危機に立ち至ったら全てがわやになる可能性も否定できない。これが巷で言われている資本主義の崩壊の引き金になるかも。
(2013年6月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国国内での金融危機発生を何としても回避する。中国人民銀行(中央銀行)のこうした姿勢がいよいよ明らかになった。
この2週間、資金供給を絞って金融システムを資金不足に追い込み、銀行の自浄作用を促してきた人民銀が、25日になって強硬姿勢から大きく転じた。
銀行へ資金供給を明らかにした中国人民銀行(25日、北京)=ロイター
従来とは一転し、資金繰りの苦しくなったいかなる金融機関にも資金を供給すると約束したのだ。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が昨年打ち出した「無制限」の国債購入をほうふつとさせる支援策だ。さらに、具体的な名前は伏せながらも、既にそうした支援を実行したと明かした。
先週、中国の市場金利が2桁に急上昇して銀行間市場が機能停止に陥ったため、中国版リーマンショックが近いのではないかとささやかれた。しかし、人民銀が銀行支援の方針を宣言したため、金融機関の大きな破綻や金融システムがメルトダウンする事態は避けられる見通しとなった。
「市場金利は週末にかけて大幅に下がり、金融市場や実体経済は落ち着くだろう」とオーストラリア・アンド・ニュージーランド(ANZ)銀行の劉利剛氏は話す。
■債券市場の不安定を懸念
人民銀の方針転換の引き金となったのは市場の混乱だ。株式市場は先週一週間で10%下落した。25日には一時さらに6%下げたが、中銀が支援に乗り出すとの噂が広まり、終値はほぼ横ばいに戻った。
中国政府内では債券市場が不安定になることへの懸念が強まったとみられる。
さらに、中国の経済成長率が予想以上に落ち込みかねないという不安もあった。専門家は以前から、過去10年間の年率10%という成長ペースが徐々に鈍化し、数年後には7.5%になると予想していた。
今回の資金逼迫により、6%も現実味を帯びるとの見方がアナリストの間で浮上した。これは中国政府にとって受け入れがたい水準だ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの陸挺氏によると「現在の成長率は、新指導部が容認できると示唆した下限に近い」からだ。
■「影の銀行」対策の狙いも
市場や経済に加え、水面下ではもう一つの要因が働いている。人民銀が金利上昇を容認したのには「影の銀行(シャドーバンキング)」対策という大きな狙いがあった。信用拡大を制限することで、銀行の簿外融資のまん延に歯止めをかける意向だった。
しかし実際には、意図したのと全く逆の効果が現れた。現金不足に陥った銀行は、預金者を集めるために「理財商品」と呼ばれる高リスク・高金利の金融商品を大量に売り出したのだ。
調査会社CNベネフィットによると、先週、理財商品を販売する銀行の数は18%増え、同商品の販売件数は67%増加した。
市場が逼迫して以来、理財商品の利回りが徐々に上昇していることが各種の調査でわかった。
CNベネフィットの調べでは、先週4.2%だった平均利回りが約4.5%まで上昇したという。
一方、フィナンシャル・タイムズ紙が今週調査した8行では、いっそう急激な金利上昇が見られた。どの銀行も5.4%以上の短期金融商品を販売し、6%を超えるものも複数あった。これは中国の指標となる預金金利のほぼ2倍に相当する。
市場金利の上昇を転嫁していることも一因だが、主な理由は新規顧客を獲得し、それによって必要な流動性を確保することだとアナリストは指摘する。中堅の江蘇銀行のマネジャーは「銀行はどこも必死だ」と語った。
市場にあふれる新商品は金融システムの他部門を侵食している。スペイン大手銀BBVAの中国担当エコノミストは「人々は株式から資金を引き上げ、理財商品を買っている」と指摘する。
人民銀が銀行の保護を明言したことで、簿外商品を通じて現金を調達する動きはいくらか沈静化するだろう。しかし、中国が抱える「影の銀行」問題は未解決のままだ。
By Simon Rabinovitch
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中国が何とか切り抜けなければ、リーマンショック以上の金融危機になるかもしれないし(その可能性大)、一時的にこのところ何故か安定している日本国債が買われるかもしれないが、金融危機に立ち至ったら全てがわやになる可能性も否定できない。これが巷で言われている資本主義の崩壊の引き金になるかも。