気まぐれ何でも館:(546)美しく愛しき日本(岡野弘彦)(1)
秋出水 たぎちながるる谷川の 土橋(どばし)のうへに 身は立ちすくむ
水ほそる一筋の川。夕映えて 夜に入りゆかむ 峡のかそけさ
水冴ゆる十月の川。卵(こ)を生みて命絶えゆく魚を 流せり
肌銹びて榎(え)の葉のごとき落ち山女(やまめ)。岸にただよひ いまだあぎとふ
とぼとぼと われに従ふ老い母と この橋すぎて別れなむとす
ここ過ぎて帰らずなりし弟の 魂(たま)かへりこよ。戦ひを終ふ
大汝(おほなもち) 少彦名(すくなひこな)も老いの世は 国おとろへて嘆きたりけむ
青海に舟傾けて没(い)りゆきし 事代主(ことしろぬし)の怒り おもほゆ
いそひよどり来鳴く入江の潮なぎて 流され人の島 かすみ見ゆ
なげき歌詠みてすぎたる時の間に わが祖(おや)の世は おとろへてゐつ
仇討たば やがて討たるる身とならむ。めぐる輪廻をなげく 運命(さだめ)ぞ
親が子を 子が親を殺す世なりけり。継子話もかたる甲斐なき
13.6.16 抱拙庵にて。
秋出水 たぎちながるる谷川の 土橋(どばし)のうへに 身は立ちすくむ
水ほそる一筋の川。夕映えて 夜に入りゆかむ 峡のかそけさ
水冴ゆる十月の川。卵(こ)を生みて命絶えゆく魚を 流せり
肌銹びて榎(え)の葉のごとき落ち山女(やまめ)。岸にただよひ いまだあぎとふ
とぼとぼと われに従ふ老い母と この橋すぎて別れなむとす
ここ過ぎて帰らずなりし弟の 魂(たま)かへりこよ。戦ひを終ふ
大汝(おほなもち) 少彦名(すくなひこな)も老いの世は 国おとろへて嘆きたりけむ
青海に舟傾けて没(い)りゆきし 事代主(ことしろぬし)の怒り おもほゆ
いそひよどり来鳴く入江の潮なぎて 流され人の島 かすみ見ゆ
なげき歌詠みてすぎたる時の間に わが祖(おや)の世は おとろへてゐつ
仇討たば やがて討たるる身とならむ。めぐる輪廻をなげく 運命(さだめ)ぞ
親が子を 子が親を殺す世なりけり。継子話もかたる甲斐なき
13.6.16 抱拙庵にて。