気まぐれ何でも館:(544)落合直文(萩之家歌集)(10)
  
 おなじ月をおなじ川瀬におなじ友とことしの秋も来てみつるかな
  
 病みふして床にある身は人よりもはやく知られぬ秋のはつ風
  
 窓の外に二もと三もと竹うゑてさびしき夜半の雨を聞くかな
  
 鴨ふたつねぶれるままに流れけりぬるみそむらむ春の川水
  
 よき歌のいよいよ多くなるままにいよいよ君の痩せてゆくかな
  
 わらび折るとわが子二人をつれゆけば焼野の末に雉子なくなり
  
 佐保姫のかすみの衣(きぬ)につつまれてまだねぶりをり背山妹山
  
 馬よけて道のかたへにたちゐたる少女はもてり梅のひと枝
  
 夢に見し女神のあとをしたひきて今朝(けさ)われ見たり白百合の花
  
 わが墓を訪ひこむ人はたれだれと寝られぬままに数へつるかな
  
 ともかくもこの秋まではながらへて今一たびは萩の花見む
  
13.6.2 抱拙庵にて。