(2013年3月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
イタリアの総選挙以来、ユーロ圏の危機が戻ってきたのかどうかという議論が金融市場と欧州各国の首都を席巻している。この議論には、1つ、厄介な想定が含まれている。危機が1度は去ったということだ。
ユーロ崩壊の実存的な脅威は消えたかもしれない。だが、この半年間、欧州の政府関係者の間で自画自賛ムードが広まる一方、多くの国では景気が一段と収縮した。失業率は域内全体で軒並み2ケタに上昇し、国債発行残高の水準は過去最高を記録している。
我々はこの世の終わりを避けた。第2次世界大戦以来、最悪の景気後退で済んでいることを喜ぼう――。欧州連合(EU)の指導者たちはこう言っているようだ。
大恐慌時代の米国並みの苦境
ギリシャの統計は信じ難いほどひどいため、何度繰り返してもいいだろう。ギリシャ経済は2008年以降、規模が4分の3に縮小し、労働者の4人に1人以上が失業している。ギリシャ財務省の経済諮問委員会の委員長を務めるパノス・ツァクログロウ氏が言うように、これに比類するのは大恐慌時代の米国とワイマール期のドイツしかない。
ギリシャは常にユーロ圏の例外だったが、他国も追いつきつつある。スペインの失業率はギリシャと同じくらい高く、イタリアの景気収縮は、ギリシャの基準と比べると緩やかとはいえ、3カ月前に予想されていた不況より深刻になる。フランスでは、失業率が11%に達する可能性がある。
こうした惨状の中で、イタリアの有権者が悲鳴を上げ、ユーロ圏における緊縮主導の危機対応は問題を軽減するどころか、悪化させているのではないかという議論を再燃させた。
一部の論争は辛辣になった。シルビオ・ベルルスコーニ氏は選挙戦の最中に、イタリアの緊縮政策を「メルケルの絶対命令」と呼んだ。社会民主党(SPD)のドイツ首相候補、ペール・シュタインブリュック氏は、ベルルスコーニ氏と、やはり反緊縮を掲げる活動家のベッペ・グリッロ氏を「道化」と呼んだ。
EUの欧州委員会で経済問題を率いるオリ・レーン氏が、各国は財政改革をためらうべきではないと述べると、ノーベル賞を授賞した経済学者のポール・クルーグマン氏がこれを「Rehn of Terror(Reign of Terror=恐怖政治=をもじった言葉)」と断じ、オンライン上の舌戦を引き起こした。
だが、これだけ大騒ぎして、この議論は何らかの変化を生むのだろうか? 今から9カ月前、フランスは総選挙を実施し、反緊縮を掲げる候補が、EUの危機対応の主要設計者を押しのけた。それでもフランソワ・オランド氏の勝利はほとんど何も変えていない。
オランド大統領の下で経済財政相を務めるピエール・モスコビシ氏は7日、EUの緊縮志向の政策を変えるのはなぜそんなに難しいのかと問われると、仲間のユーロ圏の指導者たちの「乏しい想像力」のせいにした。
しかし今、想像力よりはるかに重要なものが抑制されて乏しくなっている。方向を転換する政府の力だ。
すべてのユーロ圏諸国で財政協定が国法となっており、政策立案者はほとんど何もできず、赤字削減と改革の厳しい目標を守るしかなくなっている。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が述べたように、選挙結果に関係なく、イタリアの改革は「自動操縦」で進められるのだ。
では、有権者が自分たちが反対する経済政策を理由に現職の指導者を選挙で落とし、その挙げ句、新たな指導者が全く同じ政策の実行を強いられることに気付かされたら、何が起きるのだろうか?
投票しても何も変わらないと・・・
ブリュッセルに本拠を構えるシンクタンク、欧州政策センター(EPC)の政治アナリスト、ヤニス・エマヌイリディス氏は、これは社会の爆発を招くレシピであり、有権者をグリッロ氏のような比較的温和なポピュリストか、ギリシャのネオナチ政党「黄金の夜明け」のような厄介なポピュリストの元へ走らせることになると指摘する。
「投票に行っても、何も変わらないように見える。簡単な答えを持っている人たちの魅力を高めているのが、この状況だ」とエマヌイリディス氏は言う。
学術誌には、経済調整を強いられる国々で政治の安定がどれだけ続くかという試算が満ち溢れている。こうした研究の大半がそうであるように、「状況次第」というのが、その答えだ。
大方の人が同意しているように思えるのは、政治の中道派がいつまでも持ち堪えられないということだ。ギリシャの経済収縮は6年目に入ろうとしている。スペイン経済は5年間で4度目の縮小となる。イタリア経済は6年間で4度目の縮小だ。1度も去っていない例のユーロ圏の危機はまだ当分続く可能性がある。
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日本はアベノミクスでデフレスパイラルから脱却かも、と言われていますがユーロ圏も深刻なようですね。このまま日本の経済が浮揚すれば、ユーロ圏も右にならえすると思うのですが、その時はどうなるんでしょうね。
イタリアの総選挙以来、ユーロ圏の危機が戻ってきたのかどうかという議論が金融市場と欧州各国の首都を席巻している。この議論には、1つ、厄介な想定が含まれている。危機が1度は去ったということだ。
ユーロ崩壊の実存的な脅威は消えたかもしれない。だが、この半年間、欧州の政府関係者の間で自画自賛ムードが広まる一方、多くの国では景気が一段と収縮した。失業率は域内全体で軒並み2ケタに上昇し、国債発行残高の水準は過去最高を記録している。
我々はこの世の終わりを避けた。第2次世界大戦以来、最悪の景気後退で済んでいることを喜ぼう――。欧州連合(EU)の指導者たちはこう言っているようだ。
大恐慌時代の米国並みの苦境
ギリシャの統計は信じ難いほどひどいため、何度繰り返してもいいだろう。ギリシャ経済は2008年以降、規模が4分の3に縮小し、労働者の4人に1人以上が失業している。ギリシャ財務省の経済諮問委員会の委員長を務めるパノス・ツァクログロウ氏が言うように、これに比類するのは大恐慌時代の米国とワイマール期のドイツしかない。
ギリシャは常にユーロ圏の例外だったが、他国も追いつきつつある。スペインの失業率はギリシャと同じくらい高く、イタリアの景気収縮は、ギリシャの基準と比べると緩やかとはいえ、3カ月前に予想されていた不況より深刻になる。フランスでは、失業率が11%に達する可能性がある。
こうした惨状の中で、イタリアの有権者が悲鳴を上げ、ユーロ圏における緊縮主導の危機対応は問題を軽減するどころか、悪化させているのではないかという議論を再燃させた。
一部の論争は辛辣になった。シルビオ・ベルルスコーニ氏は選挙戦の最中に、イタリアの緊縮政策を「メルケルの絶対命令」と呼んだ。社会民主党(SPD)のドイツ首相候補、ペール・シュタインブリュック氏は、ベルルスコーニ氏と、やはり反緊縮を掲げる活動家のベッペ・グリッロ氏を「道化」と呼んだ。
EUの欧州委員会で経済問題を率いるオリ・レーン氏が、各国は財政改革をためらうべきではないと述べると、ノーベル賞を授賞した経済学者のポール・クルーグマン氏がこれを「Rehn of Terror(Reign of Terror=恐怖政治=をもじった言葉)」と断じ、オンライン上の舌戦を引き起こした。
だが、これだけ大騒ぎして、この議論は何らかの変化を生むのだろうか? 今から9カ月前、フランスは総選挙を実施し、反緊縮を掲げる候補が、EUの危機対応の主要設計者を押しのけた。それでもフランソワ・オランド氏の勝利はほとんど何も変えていない。
オランド大統領の下で経済財政相を務めるピエール・モスコビシ氏は7日、EUの緊縮志向の政策を変えるのはなぜそんなに難しいのかと問われると、仲間のユーロ圏の指導者たちの「乏しい想像力」のせいにした。
しかし今、想像力よりはるかに重要なものが抑制されて乏しくなっている。方向を転換する政府の力だ。
すべてのユーロ圏諸国で財政協定が国法となっており、政策立案者はほとんど何もできず、赤字削減と改革の厳しい目標を守るしかなくなっている。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が述べたように、選挙結果に関係なく、イタリアの改革は「自動操縦」で進められるのだ。
では、有権者が自分たちが反対する経済政策を理由に現職の指導者を選挙で落とし、その挙げ句、新たな指導者が全く同じ政策の実行を強いられることに気付かされたら、何が起きるのだろうか?
投票しても何も変わらないと・・・
ブリュッセルに本拠を構えるシンクタンク、欧州政策センター(EPC)の政治アナリスト、ヤニス・エマヌイリディス氏は、これは社会の爆発を招くレシピであり、有権者をグリッロ氏のような比較的温和なポピュリストか、ギリシャのネオナチ政党「黄金の夜明け」のような厄介なポピュリストの元へ走らせることになると指摘する。
「投票に行っても、何も変わらないように見える。簡単な答えを持っている人たちの魅力を高めているのが、この状況だ」とエマヌイリディス氏は言う。
学術誌には、経済調整を強いられる国々で政治の安定がどれだけ続くかという試算が満ち溢れている。こうした研究の大半がそうであるように、「状況次第」というのが、その答えだ。
大方の人が同意しているように思えるのは、政治の中道派がいつまでも持ち堪えられないということだ。ギリシャの経済収縮は6年目に入ろうとしている。スペイン経済は5年間で4度目の縮小となる。イタリア経済は6年間で4度目の縮小だ。1度も去っていない例のユーロ圏の危機はまだ当分続く可能性がある。
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日本はアベノミクスでデフレスパイラルから脱却かも、と言われていますがユーロ圏も深刻なようですね。このまま日本の経済が浮揚すれば、ユーロ圏も右にならえすると思うのですが、その時はどうなるんでしょうね。