気まぐれ何でも館:(532)山崎方代(伽葉)(8)
  
 鼻まがりの鮭をいただき見てみるとなるほど見事な鼻曲りなり
  
 取り入れをおえし田圃のはてしれず穴のなかから田螺をひろう
  
 父親の広い背中にゆび先で伊呂波を書いて当ててもらった
  
 力には力をもちてというような正しいことは通じないのよ
  
 丸出しの甲州弁で申します花は死であり死は花である
  
 今年はじめて降りくる雪は白くして鳥海山は天はるかなり
  
 椎の実をひろい集めて椎の実のお餅を撞いて食べてみにけり
  
 頭の毛に指さし入れて掻いている一人は遂に一人なりけり
  
 赤旗の日曜版のみ取りましてずっと勉強をしておりまする
  
 妹のささ代が死んで五十年天から雪がこぼれきにけり
  
 じっとこう机の前に腕をくみ坐っていると耳は要らない
  
13.3.9 抱拙庵にて。