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 田坂広志 「風の便り」 特選  第81便    
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 「創造性」という過ち



 昔、ある喫茶店で、
 二人の学生が、熱心に議論をしていました。

 二人は、美大で絵を専攻している学生のようでしたが、
 耳に入ってくる二人の議論は、
 「いかにして創造性を身につけるか」というものでした。

 一人は、創造性に優れた作品を
 数多く鑑賞することの大切さを語っていました。

 一人は、無垢の心で自然に触れ
 感じる力を磨くことの大切さを語っていました。

 二人は、画家をめざす者として、
 創造性を身につけたいとの情熱に溢れ、
 謙虚に、そして、真摯に語り合っていたのですが、
 その話を聞いていて、
 なぜか、素朴な疑問が、心に浮かびました。


 はたして、ピカソは、
 「創造性」を身につけたいと思っていただろうか。

 おそらく、ピカソの心の中には、
 「創造性」という言葉は無かった。
 
 そして、
 彼の作品の中に人々が感じる「創造性」は、

 彼にとっては、全身全霊での自己表現の
 単なる「結果」にすぎなかった。


 それが真実なのでしょう。


 しかし、それにもかかわらず、我々は、
 いつも、過ちを犯してしまいます。


 「結果」にすぎないものを、
 「目的」にしてしまう。


 その過ちを、犯してしまうのです。



 2002年10月3日
 田坂広志





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創造性ということを独創性に変えれば数学者にもそのまま当てはまる言葉です。