気まぐれ何でも館:(531)山崎方代(伽葉)(7)
  
 野の芹を豆腐の上にふりかけてあなたのことを思っています
  
 水無月の雨はしずかに山繭の糸よりほそぼそほぐれゆく
  
 一日が浮き世のように長いので急須の垢をこすって落す
  
 此のように何を食べてもうれしくて笑い飛ばしてやりたいのだよ
  
 九月二日昼の窓から秋風がにっこり笑って来てしもうたり
  
 馬の背の花嫁さんは十六歳方代さんのお母さんなり
  
 酒たばこふっつりと止めまして専ら山の零余子(むかご)取りなり
  
 湾(いりうみ)のはずれに小さな村があるすももが赤く熟れている
  
 茶を沸かし坐っていると一日がネルでくるんだようである
  
 ただ一人卓をかこんでおりますとあわれでならなくなってくる
  
 軒先に荒巻一本つりさげて七十歳の春をまつなり
  
13.3.2 抱拙庵にて。