気まぐれ何でも館:(530)山崎方代(伽葉)(6)
  
 いつ見ても机の前に坐りたり坐りっきりになっちまうのか
  
 鶏はやたらに餌を飲み下(おろ)し尻から卵をおし出しである
  
 川床にころがっていた石ころを本尊さまと崇めまつりぬ
  
 太書きの万年筆をたまわりぬキリスト様は何も呉れない
  
 お隣の若奥様に声をかけ青紫蘇の苗わけ合いにけり
  
 私より一足先に越して来て雀は廂に巣をかけそむる
  
 年老いし今でも思いは変わらないうまい話に乗ってしまえり
  
 甥の子の久代がある日訪ねきて目に目薬をさしてくれたり
  
 どこかしら遠いところにて山鳥の雛がかえって鳴いている
  
 母親をともないて来て少女子(おとめご)が色紙一枚買うて帰れり
  
 早くから明りをともしわたくしは身の不幸を考えている
  
 方代の名前の下に草という陶印を捺して色そえにけり
  
13.2.22 抱拙庵にて。