気まぐれ何でも館:(528)山崎方代(伽葉)(4)
  
 ここ過ぎてうれいは深し西行の歌の秘密はいまも分からない
  
 原稿用紙のしわをのばして書きすてし歌のしらべを拾いあげたり
  
 くらしむきにかかわりはなしこの頃は新聞がみの袋張りなり
  
 甲州の柿はなさけが深くして女のようにあかくて渋い
  
 鍋蓋を軒に吊して待っている御用の方は鳴らしてほしい
  
 眠れない寒い夜なり唐茄子(とうなす)の種を炙って食べてみにけり
   (足立註:唐茄子=かぼちゃ)
  
 一日に一食を取る原則をかたくまもりて飲んでいる
  
 つくづくと腰を下ろして見まもれり山葵の花はこまかかりけり
  
 こんな夜にかぎって雨が降り出でて空の徳利を又ふってみる
  
 あしびきの雉子の卵をおごそかに砕いて猪口に落しておる
  
 一丁の豆腐の前の人生を窓の外から覗きたもうな
  
 べに色のあきつが山から降りて来て甲府盆地をうめつくしたり
  
 鉢うえの蘭が小さな青い実を二つかかげていたまいにけり
  
13.1.31 抱拙庵にて。