気まぐれ何でも館:(524)近藤芳美(吾ら兵なりし日に)(3)
煉瓦家の或る木立よりいつまでも吾が口笛に応へ居る鳥
手を脚を失なふ兵よ並び寝て病みしは互ひに戦(たたかひ)を言はず
夢枕に吾が立ちたりと告げて来し母を思ひて今宵眠れず
放たれて草食む兎一日を結核病棟の柵より出でず
病む妻を心に抱けりいつからか煙草止めゐし白き吾が指
傷に泣く声に離れて覚め居れば胸の上を鼠走りぬ
傍らに皿置き行けば体起す髭のびし傷兵ら表情もなく
両手なきを知らず食器を配り行けばそのまなこにて吾は見られぬ
病兵と煙草を換ふることを知り鉄条網にすがる女ら
兵はみな言挙げずして戦ふと苦しき祖国を諭す記事読む
十二月八日今宵妻に書く吾が葉書遺書めき行きて二枚にわたる
13.1.5 抱拙庵にて。
煉瓦家の或る木立よりいつまでも吾が口笛に応へ居る鳥
手を脚を失なふ兵よ並び寝て病みしは互ひに戦(たたかひ)を言はず
夢枕に吾が立ちたりと告げて来し母を思ひて今宵眠れず
放たれて草食む兎一日を結核病棟の柵より出でず
病む妻を心に抱けりいつからか煙草止めゐし白き吾が指
傷に泣く声に離れて覚め居れば胸の上を鼠走りぬ
傍らに皿置き行けば体起す髭のびし傷兵ら表情もなく
両手なきを知らず食器を配り行けばそのまなこにて吾は見られぬ
病兵と煙草を換ふることを知り鉄条網にすがる女ら
兵はみな言挙げずして戦ふと苦しき祖国を諭す記事読む
十二月八日今宵妻に書く吾が葉書遺書めき行きて二枚にわたる
13.1.5 抱拙庵にて。