気まぐれ何でも館:(522)近藤芳美(吾ら兵なりし日に)(1)
  
近藤 芳美(こんどう よしみ、男性、1913年5月5日 - 2006年6月21日)は、日本の歌人である。
本名は近藤 芽美(読みは同じ)。戦後の歌壇を牽引する歌人として活動し、文化功労者に選ばれた。長年「朝日歌壇」(朝日新聞)の選者を務めたことで知られるほか、建築家としての顔も持つ。
  
 ささやき合ふ兵の国訛しげき中生死を思ふ遙かなる如
  
 傍らより軍装をなでむばかりなる父母に遺髪袋を渡さむとす
  
 崩れたる壁より深く月射して銃抱く一人一人を照す
  
 わづかなる休止を日向に居並べり狂ふ時計をみな腕にして
  
 うつつには整理し得ぬものを前線に出る日を希ふただ何故となく
  
 夢に居て妻をいだきしことあらずとりとめもなくよぎる悲しみ
  
 ありありて帰る日を恋ふ溝萩の咲きつづきたる新薬師寺の路
  
 遺書書きし思ひもすでに偽りとみづから責めて夜は夜を居つ
  
 夜半にして汽笛の如く曳く音を前線深く行く汽車と思ふ
  
 月明り水の如くにありしかば火花蹴り行く靴の鋲より
  
 風の中僧侶出身の兵ひとり経よむときに帽とり並ぶ
  
12.12.22 抱拙庵にて。