領土問題が先鋭化した背景
 日本が周辺国との間で抱えている領土に関する問題が、この1~2年で先鋭化し、政府間の外交だけでなく、民間の経済活動や文化交流にもマイナスの影響を及ぼすようになっている。日本が領土に関し対立を抱えている地域とは、ロシアとの間の北方領土、韓国との間の竹島、そして日本政府は領土問題と認めていないが中国と台湾との間の尖閣諸島である。北方領土は第二次大戦後、竹島は50年代以降、尖閣諸島は70年代以降、それぞれ日本との間で摩擦の原因となってきたが、それらの問題が常に二国間関係の焦点となってきたわけではない。時期によって対立の度合いは激しくなったり弱まったりしてきたが、最近、ロシア、韓国、中国のいずれもが領土問題で日本に対し、強硬な姿勢を取るようになってきている。

 この、中国メディアいうところの「日本包囲網」は、“包囲網”と呼べるほど各国が意図して連携した結果ではないが、日本の政局が安定しておらず、強い外交が推進できない点について足元を見られた部分はあるだろう。とはいえ、現在陥っている状況の原因すべてを民主党政権の外交手腕に求めるのは酷である。領土問題の先鋭化は、アジア地域における長期的なパワー・バランスの変化を背景に起こっている現象だからである。

 そもそも、領土問題の解決には長い時間がかかる。事実、これらの問題は自民党政権時代から存在しているが、その間もほとんど事態の進展は見られなかった。さらに、相手国の国内事情で、領土問題が持ち出され煽られることもある。韓国や中国が指導者交代の時期に入ったことも、領土問題について強硬な姿勢を取らせる原因の一つとなっている。

 ただし、領土問題に関し現在日本が直面している状況について、民主党政権に何の責任もないかといえば、もちろんそのようなことはない。例えば、確たる準備も根拠もなく発せられた「北方領土問題を半年から1年くらいの間で解決する」という鳩山発言などは、日ロ双方の政策担当者に誤ったイメージを与えることになった。より根本的には、民主党政権が外交・安保政策に弱いというイメージを持たれたこと、党や政府内における調整が欠如していたこと、対外的な発信の有り方が国内向けであったことなどは、反省すべき点である。

民主党の領土問題に対する姿勢
 2009年の民主党マニフェストには、北方領土問題の解決に向けての前向きな姿勢と、「わが国が領土主権を有する北方領土・竹島問題の早期かつ平和的解決に向け粘り強く対話を積み重ねます」という記述があったが、2010年参院選マニフェストでは領土問題に関する記述はなくなり、その代わりに、2009年版では言及のなかった防衛政策に関する記述が若干増えることになった。前述の通り、領土問題は一朝一夕で解決できるものではなく、問題解決に向けた進展がなかったからといって、直ちに民主党政権の失点とされる性質の問題ではない。

 しかし、領土問題のために二国間のさまざまな政治対話や文化交流が中止され、経済にも影響が出ている現状は、民主党が掲げた「中国、韓国をはじめ、アジア諸国との信頼関係を構築」するという目標とも、「(さまざまな)分野において、アジア・太平洋地域の域内協力体制を確立」するという目標とも合致しないだろう。「さまざまな分野での協力を深めていくことで、信頼関係を築き上げ、話し合いによる問題解決を目指す」だけでは、日本の国益を守っていくのに不十分であることを露呈したのである。

=============================

難しいことをやってくれるのが高い給料をもらっている政府関係者のはずですが、まあそんなことを言っても仕方ない面々だけれど、挙党一致で知恵をしぼってほしいものです。もともと日本は外交下手というか、折衝(ネゴシエーション)能力に欠けるし、日本の歴史自体をまともに教育されていない面もありますね。なんか失礼ながら政治家が烏合の衆のように思えてしかたありません。