気まぐれ何でも館:(515)三木羅風(トラピスト歌集)(7)
踏まれふまれてなほ花咲ける雛菊の紅(あか)きを見たり我ゆく路に
客去りて雨は静(しづか)に落ち来るトラピストの春は静(しづか)なるかな
雨降(ふ)りてわらび生(お)ひたり草の間(ま)に松葉(まつば)かきのけ春の日のもと
春雨(はるさめ)のうるほふほどに降りたるに青緑(あをみどり)なす路(みち)のよろしさ
暮れ行きて燈(ひ)をともす頃鐘(かね)の鳴る春の夕(ゆふべ)は静(しづか)なるかな
水元(みづもと)に菫(すみれ)の花の咲きゐたり青苔(あをごけ)むせる石の狭間(はざま)に
霞(かす)みたる海辺(うみべ)の森に雲雀(ひばり)啼(な)き草原(くさはら)の上に牛のくさ食(は)む
遠き丘(をか)に草焼く煙(けむり)立ちのぼり雲低(ひく)うしてあたたかき昼
鳥低(ひく)く野辺(べ)の草原飛びゆけりやがては見えず春の日和(ひより)に
磯浜(いそはま)に船は上げあり漁士(れうし)らは網(あみ)をととのへ屯(たむろ)するかな
貝殻(かひがら)の落ち居(ゐ)る磯(いそ)を歩みつつ杖(つゑ)を持ちゐる我(われ)は安けし
12.11.3 抱拙庵にて