気まぐれ何でも館:(514)三木羅風(トラピスト歌集)(6)
  
 いと白き桜の花の散る時に風は幽(かす)けく空をわたりぬ
  
 春の日にそぞろあるきの小丘(こをか)より桜へだてて燈台を見る
  
 梅あまた咲けるを見ればなつかしむまたも来(く)ることなしと思ふに
  
 井(ゐ)の中をのぞきて見れば青苔(あをごけ)の透きて見えけり春の一日(ひとひ)に
  
 夜(よ)は更(ふ)けて月は桜に照りたらむ祈(いのり)して寝(ね)む春の一夜(ひとよ)を
  
 春雨(はるさめ)の中に鳴く鳥ささ鳥よ鶯もまた声を合(あは)せり
  
 谷渡るうぐひすの声六月も近しと思ふ春雨(はるさめ)の頃(ころ)
  
 雨霽(は)れて明(あか)るき空に雲と松光りたりけり此世(このよ)美し
  
 蒲公英(たんぽぽ)の青草(あをくさ)まぢり咲きそろふ五月も末(すゑ)の我家(わがや)の畑(はたけ)
  
 蕗(ふき)の葉に幽(かす)けきそよぎ見られけり雲の晴間(はれま)に吹ける下風(したかぜ)
  
 若芽(わかめ)せしポプラの枝(えだ)を手にとりて春の遅(おそ)きを問ひても見たり
  
12.10.27 抱拙庵にて。