気まぐれ何でも館:(511)三木羅風(トラピスト歌集)(3)
芥(あくた)焚(た)く煙しづかに青くして鳥影(とりかげ)さしぬ春の日和(ひより)に
空(そら)と地と一つになりて静(しづか)なる春の夕(ゆふべ)の雲ぞあがれる
夕暮の静なる室(むろ)にただ一人(ひとり)物思ひをれば風のそよげり
濤(なみ)の音風にまぢりて聞(きこ)えくる夜(よ)を我ひとり物思ひをり
雨の音たばしる如しいつしかに夏は来らむ春は過ぎつつ
鳥影(とりかげ)のさして行きけり桜咲く窓辺(まどべ)の昼のいと閑(しづか)にて
白ざくら咲きそろひたりその下に桜草(さくらさう)もある昼のよろしさ
風そよぐ窓べによりて桜草(さくらさう)桜の下に咲くをながめぬ
初夏(はつなつ)の風さはやかに夕暮(ゆふぐれ)の日没(にちぼつ)をふく今日(けふ)の一日(にち)
羊(ひつじ)あまた遠くに出(い)でて牛もまた草を食(は)みをり牧童(ぼくどう)はしる
子が母をよぶ声のする春雨のしとしとと降(ふ)る青き小径(こみち)に
軒下(のきした)に立ち出(い)で見れば夕月(ゆふづき)のほのかにさして雨はれにけり
12.10.7 抱拙庵にて。