気まぐれ何でも館:(510)三木羅風(トラピスト歌集)(2)
  
 辱(はづかしめ)め多き世に生れ道を行く我(われ)は一人(ひとり)にあらざりけらし
  
 静(しづか)なる雨にうるほひ野に出(い)でて鳥をききつつ青草(あをくさ)をふむ
  
 芝生(しばふ)には青草まぢり枯れくさの雨にうるほふ朝にもあるかな
  
 雀あまた集(つど)ひて鳴けり春雨の静なる朝の家の軒端(のきば)に
  
 茜(あかね)さす夕(ゆふべ)の海の空高くのぼれる月を独り眺むる
  
 去年(こぞ)の鳥来て啼(な)く朝の歓(よろこ)ばし神の賜(たま)ひし春のおとづれ
  
 あたたかき日照り満(み)つる青空(あをぞら)の高きを見れば心たのしも
  
 道の友送りいだして静なる愛をおぼえぬ朧月夜に
  
 杉の木を切りたる株の下路(したみち)に青苔匂(にほ)ふ幽なるかも
  
 梟(ふくろふ)の鳴きたる昼の並木道(なみきみち)奥の深きを声にしも思ふ
  
 奥山の春を知らむと眺めやるかなたはるかに馬子(まご)の笛鳴る
  
 夕暮の水色(みづいろ)なせる空を見て天(あめ)なる国を思ふ一時(ひととき)
  
12.9.28 抱拙庵にて。