気まぐれ何でも館:(509)三木羅風(トラピスト歌集)(1)
三木 露風(みき ろふう、羅風とも。1889年(明治22年)6月23日 - 1964年(昭和39年)12月29日)は、日本の詩人、童謡作家、歌人、随筆家。近代日本を代表する詩人・作詞家として、北原白秋と並び「白露時代」と称された。若き日は日本における象徴派詩人でもあった。
鶯(うぐひす)の日毎(ひごと)来て啼く我宿の春は静に住みよかりけり
春雨のしづかに薫(く)ゆる青松(あをまつ)の林に鳥は住(すま)ひたりけり
暁の雨あたたかにうるほひて野もせに満つる鳥のこゑごゑ
桜まだ蕾を解かずうるほひて雨に風情(ふぜい)の多くもあるかな
吹く風に春日(はるび)煙(けむ)りて白雲(しらくも)の往(ゆ)きかふ昼のたのしくもあるかな
あたたかき雲野にありて風そよぎ羊は見えず子らのゆくみゆ
春雨の谷深く啼く鶯のすがたは見えず杉の林に
静なる水のしたたる音のしてただそれのみに夜(よる)は更(ふ)けゆく
修院に見ゆる灯火(ともしび)ただ一つ夜(よる)のこころの淋しく思ほゆ
静なる心を有(も)ちて暮(くら)さまし神の聖旨(みむね)の中にある身は
12.9.21 抱拙庵にて。