気まぐれ何でも館:(494) 岡野弘彦(海のまほろば)(2)
洋(わた)なかに見はるかすものみな蒼くはろばろとして空につらなる
小さしといへど淡路はひとつ國。浦わ浦わになごむ村あり
隠り世の夕べに似つつ暗き海とほつ小島に陽は照りながら
海そらとひとつにあをし漕ぎいでてつひに帰らぬ者を嘆かふ
伊平屋渡(いへやど)の門(と)なかにありてひたぶるに海越えてゆく蝶を見にけり
夜に入りて島吹きこゆる風音のはげしき宿に戸をとざし寝る
島の村にゆきくれて道とはむとす牛引きて田をあがりこし子に
栴檀(せんだん)の花のむらさき色たちて夕づく道に子はまぎれゆく
たそがるる守礼の門の下に立ちいづち向きてかわが往(い)なんとす
壺ひさぐ店もなくなりし壺屋町ゆふ餉のにほふ道にさすらふ
くれなゐの蓋(かさ)かたむけて踊る娘(こ)の濃き眉あはれ疲れゐるらし
12.6.9 抱拙庵にて。