気まぐれ何でも館:(440) 現代短歌100人20首(32)
  
前川佐重郎(まえかわ・さじゅうろう)1943~。
  
 春くれば鼻より草もはえるだらう野仏がわづか薄目をひらく
  
 やはらかき蚊の生まれきてみどりごの頬にとまりぬけふ半夏生
  
 立つたまま馬よねむれる夜すぎには風ふきぬけて埴輪とならむ
  
 ときどきを乱心せるが紋白のもつれあひたる空真青なる
  

福島泰樹(ふくしま・やすき)1943~。
  
 ヒマラヤへゆきたしあわれ雪渓を峰を越えゆく鳥に知らゆな
  
 中也死に京都寺町今出川 スペイン式の窓に風吹く
  
 現在を書け現在を 絶望を咽喉(のみど)の裂けるような叫びを
  
 君が居て君をとりまく若草の 京大パルチザンなるヘルメット見ゆ
  
  
佐藤通雅(さとう・みちまさ)1943~。
  
 秋の野のまぶしき時はルノアールの「少女」の金髪の流れを思う
  
 ビートルズ流るる冬の昼下がり校廊を来て心は和(な)ぐも
  
 雨脚の去りたれば地の匂ひ湧く病むもの置きて帰るうつしみ
  
 枕辺の水を替へむと廊行くに身のいづくゆか鈴の音こぼる
  
12.5.5 抱拙庵にて。
  

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