気まぐれ何でも館:(487) 現代短歌100人20首(30)
  
河野裕子(かわの・ゆうこ)1946~。
  
 借りものの言葉で詠へぬ齢となりいよいよ平明な言葉を選ぶ
  
 ひとつ家に寝起きしてゐし日のことを大切に思ふ日この子にも来む
  
  
沖ななも(おき・ななも)1945~。
  
 落葉樹林山鳩のこえほのぐらしねむれる脳のなかをゆくごと
  
 父母(ちちはは)は梅をみておりわれひとり梅のむこうの空を見ている
  
 幹はなかばよじれ傾き空洞(うろ)をもち生きやすからず木というものも
  
 おさきにというように一樹色づけり池のほとりのしずけき桜
  
  
日高堯子(ひたか・たかこ)1945~。
  
 声もたぬ虫にまじりて地に這へば草のくらやみかぎりもあらぬ
  
 夏の蛇水盤のへりに喉をおき時やはらかに水呑みてをり
  
12.4.14 抱拙庵にて。
  

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