気まぐれ何でも館:(486) 現代短歌100人20首(29)
三枝浩樹(さいぐさ・ひろき)1946~。
<少年>の声に呼ばれてめくりゆく古きノートのなかの夕焼け
砂浜は海よりはやく昏れゆけり 伝えんとして口ごもる愛
喉仏さらして仰ぐ冬ぞらのいさぎよきその遠さを愛す
チェンバロの銀の驟雨に目を閉ざす 樹も樹の翳も寂かなる午後
卓上に濡れてふた房の葡萄あり かつてわがもちし朝のかなしみ
時田則雄(ときた・のりお)1946~。
汗のシャツ枝に吊してかへりきしわれにふたりの子がぶらさがる
トレーラーに千個の南瓜と妻を積み霧に濡れつつ野をもどりきぬ
離農せしおまへの家をくべながら冬越す窓に花咲かせをり
そらまめは空へ一寸日に一寸伸びつつ白き花あふらする
ハイエナも子の親なれば新しきいのちのために死肉貪る
歌人とはそも何者ぞ春の土を七五調にて歩むでもなし
蜘蛛のやうな格好(すがた)であるか炎天下這ひつくばつて薯抜く俺は
12.4.8 抱拙庵にて。
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