永田和宏(ながた・かずひろ)1947~。
従いて遊びし記憶の数かぎりなきしかも終なる夏を隔たる
(私注:著者はアメリカで高安国世氏の訃報を知った。)
傲慢を許し怠惰をまた許し終の日会うを君は許さず
用のなき電話は君の鬱のとき雨の夜更けをもう帰るべし
寒の夜を頬かむりして歌を書くわが妻にしてこれは何者
(私注:著者の夫人は歌人の故河野裕子)
追悼の文といえどもほのぼのと342と打ちて三四二と変換(なお)す
永田君歌を作れとくりかえし書きし寂しさ 高安国世
阪森郁代(さかもり・いくよ)
馬もわれも髪なびかせて佇(たたず)めり天動説をうべなふごとく
いづへよりくるしく空の垂れ来しや麒麟ひつそり立ちあがりたり
寄せて来る過去をせき止めたつぷりと眺めてゐたい日の暮れである
イグアナを飼ふ人がゐてひんやりと聖化してゆく都市の部屋(アーバンルーム)
12.3.24 抱拙庵にて。