気まぐれ何でも館:(481) 現代短歌100人20首(24)
道浦母都子(みちうら・もとこ)1947~。
ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いにゆく
調べより疲れ重たく戻る真夜怒りのごとく生理はじまる
白鳥の来しこと告げて書く手紙遠き一人に心開きて
人知りてなお深まりし寂しさにわが鋭角の乳房抱きぬ
全存在として抱かれいたるあかときのわれを天上の花と思わむ
歌よみてうた残しゆくそれのみで寂しからずや女うたよみ
洗い髪濡れて光れるそのままをあなたに倒れてゆくまでの愛
小池光(こいけ・ひかる)1947~。
死ぬまへに孔雀をくはむと言ひ出でし大雪の夜の父を怖るる
かの年のアウシュビッツにも春くれば明朗にのぼる雲雀もありけむ
廃駅をくさあぢさゐの花占めてただ歳月はまぶしかりけり
デパートにわれは迷ひぬ三匹の金魚のための沙(すな)を買はむとして
はくれんのひかりかはらず父死なば長子は遺骨次子は遺影を
ぎんなんの異臭ただよふ境内にましろき犬をみちびく少女
パンのみに生くるにあらずラズベリイ・ジャム、フランシス・ジャム右にひだりに
戦没者といひかへしとき戦死者のするどき眸はみえなくなりぬ
12.3.4 抱拙庵にて。
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