気まぐれ何でも館:(474) 現代短歌100人20首(17)
江畑實(えばた・みのる)1954~。
春浅き雑踏をゆくこころとはつばさをたたむ天使のこころ
三分の砂時計立てそのなかの砂漠に自らを追放す
院政期果てて南北朝の世に切腹といふ死の華ひらく
高柳蕗子(たかやなぎ・ふきこ)1953~。
殺人鬼出会いがしらにまた一人殺せば育つ胃癌の仏像
櫟原聡(いちはら・さとし)1953~。
はるかなる谷ひびきあひ空となり一本の樹にかなしみは降る
群青の空のあけぼの呼びあへばこだまとなりて人ひびきゆく
日輪と太陽を呼べば太陽はしづかなる空に花咲くごとし
春になる森のしづけさ語らへば梢にひびきことば幸(さき)はふ
炎炎と刺す日のひかり苦しけれど樹は生きのびよ明日のわれらに
ものの名はふかく隠れて露草のつゆけき藍の形見かがよふ
草の実をつけて歩める山道に紅葉の秋は熾(さか)んに匂ふ
あめんぼは水の上走る単純にして不可思議の天(あめ)の力に
12.1.15 抱拙庵にて。