気まぐれ何でも館:(472) 現代短歌100人20首(15)
 
大野道夫(おおの・みちお)1956~。
  
 愛された記憶の一つ秋の蝉亡くしし我を祖母が呼ぶ声
  
 捕虫網そっと開いて祖母の手へ死を触れさせしあの秋の午後
  
 人を待つ一人一人へ雪は降り池袋とはさびしき袋
  
  
小池純代(こいけ・すみよ)1955~。
  
 百の梅散りつつ問へるその問ひの答へは百の蕾なるべし
  
井辻朱美(いつじ・あけみ)1955~。
  
 少年のたてがみ透きてさやさやとはるかな死海にとほる夏かぜ
  
  
源陽子(みなもと・ようこ)1955~。
  
 かれの手が撫でたる犬がわれに来て鼻濡れているこの世の時間
  
 感情を展げるように見せに来るあなたも犬も五月の青葉
  
 到来のサラダ菜食みて身のなかに母の菜園の風を送りぬ
  
 人と人すれ違うとき微電流生まれてかすかに水仙震う
  
 眠る犬蔵い忘れし大きなる下がわが頬に残りて温し
  
 背負うなら花の荷がよき椿の香ほころび山から降りてくるころ
  
 こんとんの海から光をひろいあげ名をあたえれば蛍となりぬ
  
12.1.1 抱拙庵にて。
  
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