気まぐれ何でも館:(471) 現代短歌100人20首(14)
  
坂井修一(さかい・しゅういち)1958~。
  
 ひとは何度初雪といふものを見むゆふぐれの子が空を見ている
  
  
大谷雅彦(おおたに・まさひこ)1958~。
  
 くらがりにそよげる花の幾万の震へをおもふ根にちかくゐて
  
 樹の中を水のぼりつつ冷えてゆく泪のごとく花ひらきたる
  
 さくらさく昏きなだりに人とゐてさびしくなりぬこの花ふぶき
  
 ただ暗き梅雨の森より出でくれば皮膚青きまま匂ふしばらく
  
 山水を飲みつつはるか来たりけりこの道端に山吹の花
  
  
小島ゆかり(こじま・ゆかり)1956~。
  
 抱くこともうなくなりし少女子(をとめご)を日にいくたびか目差しに抱く
  
  
一ノ関忠人(いちのせき・ただひと)1956~。
  
 むらぎものいのちのかぎりに哭き叫ぶ羅漢しんそこかなしきものを
  
 みどりごは鳥の形態(かたち)に腕ひろげ飛ぶと見えしがねむりゆくなり
  
 滅びむとおふぐいのちをながらへて父の戦後のむなしかりけむ
  
 この父のこころ虚ろにありしこと子は知るや抱けば満身に笑む

 こゑほそくうたふ軍歌はまぎれなく父待つ夜の母のうたごゑ
  
 なきじゃくりかへりくる子よわれに似ておまへも生くることにつたなきか

11.12.25 抱拙庵にて。

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