気まぐれ何でも館:(469) 現代短歌100人20首(12)
  
 米川千嘉子(よねかわ・ちかこ)1959~。
  
 春の鶴の首打ちかはす鈍き音こころ死ねよとひたすらに聴く
  
 桃の蜜手のひらの見えぬ傷に沁む若き日はいついかに終らむ
  
 ゆふぐれのさびしい儀式子を拭けばうすうす桃色の足裏(あうら)あらはる
  
 差し歯が眠り臓器が眠りわがうちのたくさんの人と眠るかなしさ
  
  
川野里子(かわの・さとこ)1959~。
  
 遊ぶ子の群かけぬけてわれに来るこの偶然のやうな一人を抱けり
  
 ものおもふひとひらの湖(うみ)をたたへたる蔵王は千年なにもせぬなり
  
 斑鳩(いかる)きてぽぽうと鳴けば幾時代過ぎたるならむ頬づゑをとく
  
 夫(つま)がもつ柔らかいからだ堅いからだある日波うちわれをとりまく
  
 哀しみと愛(かな)しみはひとつ 遠く夜の古木(こぼく)ま白き桜花を噴きぬ
  
 かつてわれ鯨でありし日のやうにろんろんと鳴きて母を捨てたし
  
11.12.9 抱拙庵にて。
  
http://homepage3.nifty.com/kyousei/essay.html