気まぐれ何でも館:(465) 現代短歌100人20首(8)
  
早川志織(はやかわ・しおり)1963~。
  
 ほの白き卵を守りつつ女王蟻も身をよじるかな あくびのために
  
 薄青きセーターを脱ぐかたわらでペペロミアは胞子をこぼしていたり
  
 シャンプーの香りに満ちる傘の中 つぼみとはもしやこのようなもの
  
 巻貝のことりと傾ぐかそけさの春の胎児の身じろぎの音
  
 子よ、我の内側に君が棲んでいた十月(とつき)の海を教えて欲しい
  
 わたくしは人間を産んで人間が人間になる時間育む
  
 季ごとに卵を抱く蛇となり孕みていたし 誰にも告げず
  
 お母さんどこかで呼ばれる気配して振り向けば白い木蓮の町
  
  
林 あまり(はやし・あまり)1963~。
  
 顔のある花は苦手だ
  水仙と目を合わさずに男に会いにゆく
  
 花また花 夜の小川に流れゆき
  声をたてずに交わりしことも
  
 いま咲くと言ってから咲く
  営みの声のすこしの嘘なつかしく
  
 たっぷりとかまわれた夜は
  あなたから花束が届く夢などもみる
  
 花びらを持つ者どうしの性愛も
  春のさびしき華やぎのなか
  
 なにもかも派手な祭りの夜のゆめ火でも見てなよ
  さよなら、あんた
  
11.11.12 抱拙庵にて。
  

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