気まぐれ何でも館:(458) 現代短歌100人20首(1)
永田紅(ながた・こう)1975~。
輪郭がまた痩せていた 水匂う出町柳に君が立ちいる
夕闇に父を亡くしし君の声土鳩の声と混じりて聞こゆ
二十代湯水のように怖ければまた泣きもせむ日輪の下
久々に開きし本の少年は既に我より年下なりき
コスモスのほそく群れさく陽のなかでこの世のふしぎな時間と言えり
横山未来子(よこやま・みきこ)1972~。
しづかなる歓びのごと薄日さし虚空に蜘蛛の糸をあらはす
みどりごの喃語のやうに春生(あ)れてひとりひとりの耳たぶに触る
君が抱(いだ)くかなしみのそのほとりにてわれは真白き根を張りゆかむ
「また」と言ひあひて別れし晩夏よりおのおのの身に時は積もれり
ひと粒の幸ひを得し日の果てに寝つかれずつめたき水を飲み干す
11.9.25 抱拙庵にて。