研究者になるのを当然のこととしていた私が、病気をして会社を受けることになった。
指導教官から面接向けに山本周五郎をよむことを勧められた。
なにせかたいものばっかし読んでいたから、傍目にもまずいと思ったのだろう。
青べか物語は数ある周五郎の作品の中でも一押しである。
修羅界へ方向転換を余儀なくされた、宗教的理想を強く持った若い私には、著者の芽が出る前の若い頃のことを思い共感することが多かった。
全編にストリンドベリイの「苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である」ということばが通奏低音のように流れている。
修羅界でこそ、と思わされた。
結局7~8年プログラマーの仕事をして脱サラし、現在は街の数学者をやっている。
今風にかっこよく言うと、独立系の数学者というらしい。
現在は毎日がとても楽しい。