気まぐれ何でも館:(453) 高安国世秀歌鑑賞(1)
「高安国世秀歌鑑賞」、黒住嘉輝、青磁社、より、秀歌の中から秀歌と思うものを選び、適宜解説を参照しながら手短にコメントする。
高安 国世(たかやす くによ、1913年8月11日 - 1984年7月30日)は、日本の歌人、ドイツ文学者、リルケ研究者。短歌結社「塔」創設者。
かきくらし雪ふりしきり降りしづみ我は真実を生きたかりけり
第一歌集冒頭歌。旧制高校の理科に在籍し、父や兄たちと同じ医学への道を歩んでいたが、生涯を文学に捧げることにし、父母に嘆願し説得して、文学部に進むことになるが、止むに止まれぬ内面の葛藤が何年もあって、進路を決意した時の歌。
面やつれたる人らおのもおのも銃負ひていづくにぞ行く続き行きたり
「スペイン動乱の映画を観る」と詞書がある。1936年2月にスペインに人民戦線内閣が成立している。その年の歌。
このままに歩み行きたき思ひかな朝なかぞらに消ゆる雲見つ
次の歌と同じく相聞歌。この連作の作られた前年の夏に、後に結婚することになる渡辺和子と出会っている。
二人ゐて何にさびしき湖の奥にかいつぶり鳴くと言ひ出ずるはや
未だ行為を知らない青年の、みずみずしい、けがれのない抒情が歌われている。
陣痛をこらふる妻とふたり居り世の片隅の如きしづけさ
「仰のきて痛みこらふる妻の顔かがやくばかり血潮のぼれり」など出産に立ち会った作者の、おそれと喜びをうたった十一首の冒頭の歌。産みの苦しみを味わっている妻への愛と祈りのようなものが、世の片隅にいる二人に静かに流れている。
11.8.21 抱拙庵にて。
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