藤村、白秋は当たり前のことが書いてある(誰でも書けるという意味で)だけなのであるが、面識のあった朔太郎、更に東大国文・仏文で交流のあった三好達治となるとさすがに面白い。
三好達治も著者も故人であり、この本は著者死亡の翌年に出版されたのであるが、著者の心の中に達治は大きな存在としてあったことは間違いないと思う。
昭和天皇を評して、あんなにのんべんだらりとした歌を作る人が悪いことを考えられるはずがない! と達治は言っていたように記憶するが、戦後すぐに天皇退位を直言していることは初めて知った。
彼の幼年学校時代であろうか、弟の秩父宮(すごい秀才であったらしい)と机を並べて辞書などを貸し借りしていた時期があったそうで、我々の氏子感覚よりもっと近しいものが皇室に対してあっての直言であったと思う。
朔太郎も、達治も、著者も強度の神経衰弱の時期があったようで、医学の進歩した今日に生まれた私はまだ幸せといえよう。