★11.6.29 「東北地震の規模は巧妙な責任逃れのために情報操作されている」マイミクさんの日記より転載。
「原発震災の真実」広瀬隆 朝日新書より
マグニチュード9.0は真実か
原発震災の報道とは別に、東北地方三陸沖地震に関する報道のなかで、私にはどうにも解せないことがありました。NHKも含めてテレビが口をそろえて言った「1000年に1度の巨大地震」という表現です。気象庁が発表した「マグニチュード9.0」という数字が根拠になっていますが、本当にそんなに大きな地震だったのか?
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東北地方三陸沖地震のマグニチュード9.0とは、1923年9月1日の 関東大震災を引き起こした、マグニチュード7.9 の「関東地震」に比べて45倍のエネルギーがあったことになります。これが私にはにわかに信じられない。関東地震の震源は神奈川県相模湾北西沖80キロメートルなので、東京直撃の大地震ではありません。また、阪神大震災を引き起こした兵庫県南部地震は、マグニチュード7.3でした。東北地方三陸沖地震は兵庫県南部地震の355倍のエネルギー、という計算になります。
東北の被災地を取材した人に話を聞くと、異口同音に「地震による被害は大きくないが、大津波による被害がすさまじい」と言っていました。津波による被害の甚大さは私もテレビを見て恐怖を覚えました。しかし地震の「揺れ」のよる被害は正直知りません。それを取材した人の口からは、兵庫県南部地震のときに阪神高速道路を土台からひっくり返したような光景が見当たらないと……。
そこで、データをひっくり返してみました。
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東北地方三陸沖地震は史上空前の巨大地震だったのか?
私はこの経過を見ていて、怪しいと思いました。気象庁が当初、発表した東北地方三陸沖地震のマグニチュードは暫定で8,4としていました。やがて8,8に修正され、最後に9,0まで「引き上げられた」のです。
情報操作による責任逃れ
私が知っている地震・地質学者の島村英紀さん(元・国立極地研究所所長)は次のような趣旨の指摘をしています。
「今回の地震のマグニチュード9.0というのは、気象庁がそもそも『マグニチュードの物差し』を勝手に変えてしまったから、こんな前代未聞の数字になったのだ」
これまでの地震ではすべて、「気象庁マグニチュード」を採用しており、その計算式に東北地方三陸沖地震のデータを入れると、「いくら大きくても8.3か8.4どまり」と島村さんは指摘するのです。それが9.0まで上昇した理由は、「日本では学者ぐらいしか使っていない『モーメントマグニチュード』で気象庁が計算したからだ」と。
本書で使っている過去の地震のマグニチュードは、すべて従来の物差しである気象庁マグニチュードであることに注意してください。物差しをいきなり変えれば、過去の地震と比較できなくなるではないですか。なぜ、いままでの物差しを気象庁は突然に、しかも何の説明もなく変更したのでしょうか。そこに私は、科学の心理をねじ曲げる、政治的な介入を感じます。当初のマグニチュード8.4のままだと、今回の地震が「想定内」の天災ということになり、原発を運転してきた東京電力のみならず、原発を推進してきた政府や「専門家」らも責任を追及されることになるからです。
序章で触れた静岡県の浜岡原発は「マグニチュード8.4の東海地震に耐えられる」と中部電力が公表しています。マグニチュード9.0へ上昇させないと原発推進の人は全員がピンチです。前代未聞の数字を発表することで「想定外」、「1000年に1度の地震」のほうへ情報操作、世論誘導して、責任逃れを図っているわけです。
特に東京電力は、マグニチュード9.0にして、批判を避けようとしたのです。計画停電や節電で電気の売り上げが激減しているうえに、福島第一原発事故の損害賠償も巨額に上れば、経営がどうなるかわかりません。賠償額の「コスト」はできる限り小さくしたい――これが企業としての狙いなのです。巧いことに、こんな法律があるのです。
原子力損害の賠償に関する法律
第二章 原子力損害賠償責任(無過失責任、責任の集中等)
第三条 原子炉が運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、 当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、 その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない。
これは原子力損害賠償法と呼ばれる法律で、ここで何を言っているかを翻訳すると「想定外の天災などで原子力の事故が起こった場合は、企業だけに責任を負わせるのではなく、国も国民の税金で被害補償することがある」ということです。
東京電力にすれば、マグニチュード8.4から9.0への上昇によって自社で負担する賠償額が下がる可能性が出てきます。東京電力の勝又恒久会長は、3月30日、福島第一原発メルトダウン後、初めて記者会見し、損害賠償について「最大限の補償、おわびをしたい」としながらも、補償範囲とその程度は「政府と考えていきたい」と話しました。 被害者の国民にすれば、今後、トンデモナイ話を押しつけられるおそれがあります。
福島第一原発事故でもっとも被害を受けているのは、原発周辺の避難住民や出荷停止などに追い込まれた農家でしょう。放射能漏れの被害はさらに広範囲、多方面に拡大し、私たちも正常な生活をメチャクチャに破壊されています。ところが、原子力損害賠償法によって、こうした東京電力の手抜きによってもたらされた国民の被害を国民の税金で補償することになるという、許し難い結末が考えられます。