★11.4.24 「熊森協会会報に同封された資料」より原発問題について。
この資料に目を通して、どうもエライ人の言っていることはちょっとずれているな、と感じましたので要約・編集します。資料はかなりの長文なんですが、出来るだけ手短に、かつ私見と最近の福島原発事故や最近の研究のことも少し踏まえていることをお断りしておきます。
著者は元原発建設現場監督の故平井憲夫氏です。現場にいた人しか書けない内容で、今ちまたに行われている議論は現場から全く遊離しているとしか思えません。マスコミは電力会社から多額の広告費をもらっており、それなりの報道しかされていません。特に原発自体にマイナスになるようなことは巧みに避けて報道されていると言っていいと思います。
この人は原発反対運動家(それで飯を食っている人、大学などで研究したり、講演したりして)ではなく、化学製造工場などの配管が専門で、若い時に原発を造るということでスカウトされました。一作業員であれば何十年いても分かりませんが、現場監督として長く働いたので、原発の中のことは、ほとんど知っているそうです。
神戸の震災の時現地に行かれたのですが、分かったことは新幹線の線路が落下したり、高速道路が横倒しになっているのを見て、安全、安全、というのは机上の話しで、厳しいと言われる官庁検査も鉄骨の溶接の溶け込み不足は見抜けていないということでした。
原発でも設計が立派でも、いくら設計を改良しても、作業者も検査官も総素人の状態ですので、造る段階でおかしくなるようです。10年前(この人は1997年に58歳で亡くなっている)から現場に職人がいなくなりました。経験不問ということで(時には仕事の内容も知らせずに)素人が募集されています。素人ですからマニュアル通りやれるように組み立てホイホイ式で、自分のやっていることがどれほど重要なことかは全くしらないのです。これは事故、故障が多くなった原因の一つです。
技術の伝達も暗くて暑い所で、防護マスクを付けた状態できっちり出来ません。腕の良い人程、年間の許容放射線量を先に使い切るので中に入れなくなるから余計に素人任せになります。
それなら検査をきっちりやると大丈夫という人がいますが、現実は酷いものです。溶接なら、そうじゃない、こうするんだ、とやってみせる技量が必要なんですが、実際はメーカーや施主の説明を聞き、書類が整っていれば合格になります。原発の事故が頻発したので、運転管理専門官を置くことが決まったのですが、この人達は全くの素人で、3ヶ月前まではお米の検査をしていた人や、昨日までハマチの養殖をしていた人などだったようです。そりゃまあ、そんな人材がぽこぽこいるわけはないですよね。そういう人の下に原子力検査協会の人がいて、通産省(現経産省)の天下りの素人爺さんが主だそうです。聞くところによると、大型構築物(原発も含む)を造るゼネコンでも事情は同じだそうです。
平井さんは通産省は原発を推進しているところなので、そこの天下りや特殊法人でなく、第三者的な機関を作って、現場たたき上げの職人が検査と指導を行うよう、現役の時からリタイア後も一生懸命に言ってきたそうですが、お粗末な状態に変化無し。阪神の震災後に原発の耐震設計を見直したそうですが、「どの原発も、どんな地震が起きても大丈夫」と発表されました。そもそも原発にも古いのも新しいのも混在しており、古いのは地震のことなどほとんど念頭におかずに造られたそうです。それなのに、あきれた発表です。
原発内の仕事は悪条件の中でやり、普通の職場ではありません。防護服は自分を守るためでなく、放射能を外に持ち出さないための単なる作業着です。そういうことで、そういう仕事をする人の95%以上はまるっきりの素人で、農業、漁業の人などがヒマな時にやるケースも多いんですね。20分作業が出来る現場だと20分たつとアラームがとんでもない音で鳴るので、勘でもう10分たったかな、とかおちおちしっかりした仕事が出来ないんです。時計は放射能で汚染されますから持ち込めません。アラームが鳴るとレントゲンを何十枚もとった状態になるので、最初はアラームが鳴ると血の気がひくくらい怖いものだそうです。
ねじをいい加減に締めると漏れるんですが、こういう状態ではどうしてもいい加減になってしまいがちです。ということや他にも色々あって、日本の海は放射能汚染排水で汚れっぱなしなんですが、特に事故などで大量に出た場合などは県は慌てて安全宣言、電力会社は知らんふりで隠します。
原発建屋の中は放射性物質で充満しており、ほこりなどを吸うと内部被爆ということで、外部被爆より深刻で、平井さんも内部被爆を百回以上もして癌になりました。最初は死ぬのが怖かったのですが、死ぬ前に原発で知っていることを明るみに出そうと思ったんです。
原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約5時間行います。目的は不安解消のためで、被曝線量で管理しているので絶対大丈夫、癌や白血病になると反対派の人は言っているが、あれは真っ赤な大嘘、国が決めたことをやっていれば絶対大丈夫と5時間かけて洗脳します。同じような洗脳を電力会社は地域の人にも行っています。絶対安全で原発が無くなったら、電気がなくなって困ると思い込むようになるようです。
平井さん自身が20年近く、現場責任者としてオームの麻原以上のマインドコントロールをやってきました。「何人殺したか分かりません。大半の人は具合が悪くなっても原発のせいとは考えません。本人や外部に被爆の問題を漏らせば現場責任者は失格です。私は毎日がいたたまれなくなり、酒を飲んでは何のために、誰のためにこんなウソの毎日をすごすのか自問していました。気が付いたら、私の体も被爆でぼろぼろになっていました」と言っています。
あまり知られていませんんが、1989年に福島第二原発で再循環ポンプがバラバラになった大事故は世界で初めての事故でした。1991年の関電美浜原発で細管が破断した事故は、放射能を直接大気中や海へ大量に放出した大事故でした。チェルノブイリの事故の時には、あまり驚きませんでした。そのうちそういう事故は必ず起こると分かっていましたから。しかし美浜の事故では足がガクガクふるえて椅子から立ち上がれませんでした。この事故はECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で動かして原発を止めています。ECCSは原発の安全を守る最後の砦で、それを手動で止めたと言うことは、ブレーキのきかなくなった猛スピードのバスを崖にぶつけてやっと止めたということに相当するからです。
あと0.7秒でチェルノブイリになるところだったのですが、たまたまベテランの職員が来ていて、その人の咄嗟の判断で手動で止めて大事にはならなかったんです。この事故は2ミリくらいの細管が何千本もあるのですが、それが振動で触れ合わないようにしてある金具が設計通りに入っていない施工ミスです。これが20年近くの何回もの点検で見つからなかったという点検のいい加減さと、施工の際、設計者がまさかと思うようなことが平気で行われていたことが分かったんです。
1995年に福井にある動燃のもんじゅでナトリウム漏れの大事故がありました。もんじゅの事故はこれが初めてではなく、度々事故があり私は建設中に6回も呼ばれて行きました。もう会社を辞めていましたが、元の部下だった人たちが何か困ると私を呼ぶんです。あるとき「配管がどうしても合わない」ということで行ったのですが、すべて図面通りの寸法です。なかなか分からなかったのですが、もんじゅは色んなメーカーの寄せ集めで造ったので、会社ごとに切り上げ、切り下げの関係で微妙に設計基準が違っていたんです。企業秘密があってすりあわせをしてないんですね。動燃自体が各電力会社からの出向者の寄せ集めでその関係でメーカーも寄せ集めですから、事故が起きない方が不思議というもんです。その重大事故も「事象があった」と発表されたんですが。
もんじゅで使われているプルトニウムは1.4トンで、長崎の原爆は8キロです。このプルトニウムはフランスに依頼してフランスの原発(フランスは原発大国で他の国にも電気を売っている)で燃やした燃料から抽出したものです。世界中が諦めたウランとプルトニウムを混ぜた燃料を燃やすプルサーマルというやりかたです。プルトニウムは核分裂の力がウランとは桁違いに大きいんです。怖いと思いませんか。怖いから他の国は諦めたんです。アメリカでさえ大統領命令で研究すら止めています。ドイツでは出来上がったけれど止めました。なぜ日本が止めないかというと、途中で止める勇気がないということでしょう。
大変なことに原子力工学科が東大をはじめ、ほとんどの大学で無くなりました。日立、東芝の原子力部門の人は1/3になり、ガスタービン(電気とお湯を同時に作る効率的な発電設備)の方へ行きました。メーカーでさえ原子力はもう終わりだと思っているんです。原子力局長をやってた人が退官して本を書いています。「日本政府のやっているのはつじつま合わせ。電気が足りないのではなく、あまりにも無計画にウランやプルトニウムを持ちすぎて、外国から核兵器を作るんじゃないかと言われないために、平和利用(原発を造ること)にせいをだしている」ということです。情け無いです。
1966年にイギリスから輸入した原子炉が東海村で稼働しました。その後はアメリカからの輸入、途中から自前で造っています。廃炉、解体、廃棄物処理などは具体的に考えずに動かし始めました。厚い鉄で出来た原子炉も大量の放射線を浴びるとボロボロになります。だから、最初は耐用年数10年だといって、そこで廃炉、解体する予定でいましたが、1981年に10年たった福島原発1号機でいざそうしようとすると、放射能だらけの原発を無理矢理廃炉、解体しようとすると造る時の何倍ものお金がかかり、作業に大量の被爆が避けられません。それならロボットでと言う人がいますが、今のところロボットが放射能で狂って使えません。この廃炉、解体が容易にできないことは国会でも問題になりました。
結局売り込んだアメリカのメーカーが、自分の国から作業者を送り込み、日本ではとうてい考えられない大量被爆をさせて、原子炉を修理し、最近まで動いていて、震災でああいうことになりました。40年動いているこのような原発は11個あります。私は心配でたまりません、と平井さんは語っていましたが、現実のことになりました。
原発は水と蒸気で運転されるので運転を止めておくと、錆でボロボロになり放射能が漏れます。止めておくことも出来ない、廃炉、解体も出来ないので、先進各国では「閉鎖」しています。発電を止めて核燃料を取り出し、ここからが大変なんですが、原発自体が放射能まみれになっていますから、発電していた時と同じように水を入れて動かし続け(錆ないように)点検、監視、修理をし続けて放射能が無くなるのを待つんです。相当な年数がかかるはずです。チェルノブイリのコンクリート石棺も最近古びてきて放射能が再び漏れだしたようです。ゾォーとするほど不気味な話しです。
放射性廃棄物などのゴミは300年くらいの監視が必要です。プルトニウム廃棄物の場合、その前に50年冷やし続ける必要があります。
今は普通ドラム缶につめているのですが、数百万本あります。廃棄業者が300年先どうなるのか。。。その前に地球がどうなっているかということもありますが。最初は千葉沖に捨てていたようですが、海で1年もたつと腐ってしまいます。問題になって南の国の海に捨てようとしたら、安全安全というなら、わざわざこんなとこまでもってこずに何故東京湾に捨てないのか、と言われた話しは有名です。
この話しを北海道で講演したとき、女子中学生が、300年ってことは私達の世代、その次の世代がするってことですね、そんなのいやだ、と叫ぶように言いました。反論できる大人の人はいますか? 電力会社の社長も含めて。
イギリスのセラフィールドは原発のすぐ近くですが、白血病の子供が生まれる確率が高いことを本で読んで、泊原発(北海道にある)のすぐ近くの女子中学生は「私、子供を産んでも大丈夫なんですか?」と泣きながら発言しました。女の子同士はいつもその話をしているんだそうです。とても悲しいことですが、それですまされるでしょうか。
原発が止まったら電気が無くなって困る、と都会の人は原発から離れていますし、特に言いがちです。少々怖くても仕方がないと考えている人は多いと思います。それは国や電力会社が大金をかけて「原発は核の平和利用です」「日本の原発は安全だから安心です」「日本は資源がないから原発は絶対必要です」と宣伝しているので、まあ洗脳されているんですね。
電力は今のところ大量蓄電が出来ません。したがって夏のクーラーをつけてナイターを見る最高使用電力量を超える電力を常に供給出来る余力がないと、確かに停電しえらいことになります。しかし使用量の少ない夜間に余剰電力で揚水(高い所と低い所に貯水池を造って低い所の水を高い所にくみ上げる)し、電力量が増える時に高い所から低い所へ水を流す一種の水力発電することによって、原発はいらないという研究もあります。
絶対安全だといわれても安心出来るというものでもなし、今回絶対安全というのもウソということがはっきりしました。赤字国債を乱発して次世代に借金の付けをまわすのはあんまりでしょう。原発を乱立させて次世代に安心出来る住みよい地球が残せるでしょうか。可能な限りの知恵をしぼって、脱原発をするのか、原発の安全対策を考えるのか、私達は選択をせまられているように思います