- 著者: 北方 謙三
- タイトル: 三国志 (1の巻)
三国志を通しで一本読もう! ということで、史実が気になってしまうタイプの私は、三国演義ベースのものを避けて北方謙三さんの三国志を読んでいたのですが、やっと読了いたしました。
感想の前に、三国志と三国演義の違いをちょっと。日本ではかなり混同されがちなのですが、「三国志」は本来、陳寿という歴史家の編纂した歴史書で、それをもとに、羅貫中が様々な伝説を交えて小説にしたものが「三国演義」なのです。吉川英治氏の『三国志』などは、三国演義をもとに書かれています。「桃園の誓い」なんかは、三国演義のエピソードです。
で、北方三国志なんですが、長所はなんと言っても読みやすい、ということでしょう。なにしろ、新しいシリーズですから。ただ、戦闘シーンが多いのは嫌、という人にはキツいかもしれないです。兵力は何万でそのうち騎兵何万、歩兵何万、陣形はどう……というような描写が続きますので。私はこういうのは苦にならない人なので、むしろ楽しく読んだのですが。っていうか、三国志には避けられないものでしょうからね、こういう描写は……。
そして、曹操がかっこいい! これはポイント高いです(笑) なんで三国演義ベースの作品を避けたかって、曹操がかっこいいのが読みたかったからですし!
逆に短所は……劉備が……あんまり良くないなー、と思うのです。私は、徹底して「徳の将軍」として描かれる劉備は、うさんくさい気がしてしまってあまり好きではないのですが。北方三国志では、激しやすい一面も持ちながら、それをうまく張飛にフォローしてもらっている劉備、というように描かれています。
それはすごくいいと思うのですが、長坂のところとか、孫尚香との関係とか、個人的には「うわあ、最低だこの男……」と思いながら読んだんですが。劉備スキーな人とか、読んで嫌な気はしなかったのでしょうか……。気になる……。
あとは、オリキャラが活躍しすぎ。いくらなんでも出過ぎじゃないかなあ、これは……。(別巻として出ている「三国志読本」の登場人物紹介で、オリキャラには名前の下に星マークがつけられているのでそちらをご参照ください)
実在の人物でも、史実の陥穽を突いてすごいミラクルなことになった人もいるし。けっこう好き勝手やってる感じです。まあ、小説家としては、まんま書くだけ、というのはつまらないのでしょうね。でも、史実の気になる人で、まっさらな状態から三国志に入ろうという人には、おすすめできないかんじです。
……ネタバレってほどでもないのでここに書いてしまいますが。なにがびっくりかってさ……司馬懿がマゾってどいういうこと? さすがに調子乗り過ぎじゃないのか北方謙三。
そして、やはり……オヤジの読み物だな、というかんじなのがちょっと……。色っぽいシーンが結構あるのです。司馬懿しかり。電車で読んでるときなんか、ほんとに勘弁してくれないかなー、という。……そこが北方テイストなのかな。うん、読者には圧倒的にオヤジが多いのはわかってるんだよ……。
短所についてずいぶん書いてしまいましたが、総じて言えば面白い。まあ、多少いじくられていても、三国志ですからね! また、曹操・劉備・孫権のそれぞれの「天下」に対する思想の違いを、よく描いていたとも思います。ひとつの「三国志観」になっているんじゃないかと。
三国志を全く知らないという人にはおすすめしませんが、ゲームなんかでちょろっとかじっていれば、さくさく読めて良いでしょう。



