- 著者: 小野 不由美
- タイトル: 東亰異聞
十二国記シリーズの作者、小野不由美さんの作品です。梶原にき、という人の作画で、漫画にもなっていますが、読むならもとの小説のほうが断然おすすめ。梶原さんの絵は好きなんですけど、やっぱり小説のほうが漫画より情報量が多いですから。
物語の舞台は、東亰です。とうけい、と読みます。東京(とうきょう)とは別の都市でありながら、よく似た都市。いわば東京のパラレルワールド。東亰(とうけい)は、東京(とうきょう)と違ってほとんどが埋め立て地であり、でも、東京(とうきょう)と似たような経緯で明治維新を迎えて、文明開化に沸いている。
けれどその東亰で、魑魅魍魎が跋扈しはじめます。高所から人を突き落としてまわる、火だるまの姿をした火炎魔人。夜道で異様なかぎ爪で人を襲う闇御前。そのほかにも人魂売りやら首使いやら……。
彼らは本当に化け物なのか、それとも人間の仕業なのか? 新聞記者の平河とその手伝いをすることになった万造くんは、調べていくうちに公爵家のお家騒動に行き当たります。はたして、魑魅魍魎騒ぎは、公爵家と関係があるのか?
闇の中で手探りするように、なかなか見えてこない事件の全貌。平河の推理も二転三転し、最後まで読ませます。
……とまあ、物語も面白いですが、もう一つ好きなのが、明治時代という舞台にふさわしい登場人物の語り口。日本語、堪能できます。
でもって最後に。この作品は、今さらどうしようもないかもしれない、でもちょっと立ち止まって考えてみたいテーマを持っています。最後まで読んだとき、さりげなく語られたそのテーマが実はこの物語全体を貫いていることに気づき、しばらく余韻に浸りながら、考え事をしてみたくなるのです。
私の、本当に大好きな作品のひとつです。