師走の大阪。夜の地下街。

赤や緑に彩られたショーウィンドウの前を、

大空まいさんは滑るように歩いてきました。

今日は、グレーにブルーのピンストライプの

入ったシャープなパンツスーツ姿です。


お互い、このところ忙しかったせいで、

なかなかゆっくり話す機会もなかったですね。

と言うと、

大空さんは♪ジングルベル♪のBGMを背に

ちょっぴり疲れたご様子で苦笑い。


「そうね~、専門学校の仕事が、やっと一区切り

ついたと思ったら、もう年末! あ~あ」


専門学校の学生には、何を教えてたんですか?


「就職準備のためのビジネスマナー指導よ。

でもこれが、結構大変。おまけに変なことがあって」


変なこと?


「そう。教室にいる生徒の数をいくら数えても、

出席者より一人多いのよ」


大げさに声を潜めて言う大空さんに、

わたしは、思わずふきだしてしまいました。

また、また~。

まぁ、学校にはそういう話は付き物ですよね。

このところ、スピリチュアルブームですし。


そういえば、空飛ぶCAには、霊感のある人が多いとか。


「そうね。私はそうでもないと思うけど、結構そういう体験談

多いかもね」


そう言って、大空さんは神妙な顔になりました。


「わたしも、仕事でホテルに泊まった時、

もうどうしょうもなく、寒気がして、居たたまれない部屋

に当たってね。同僚の部屋に転がり込んだことがある」


まあ、CAは神経を使う仕事ですからね。

様々なクルー同士の連携や、

コクピットとのチームワークに気を配りつつ、

乗客の命を預かっている。

疲れると、なぜか金縛りに遭ったりするんですね。


「そうそう、前にこんなこともあったわよ」


大空さんの同僚さんが、フライトを終え、

サイパンのホテルで休んでいた時のこと。


夜中に、なにやら、廊下で物音がする。

そして、ドンドンドン、と激しくドアを叩く人が。


なんだろうと思って、仕方なくドアを開けると、

廊下に大勢の兵士が居て、行進している。

寝ぼけ眼に呆然としていたら、

彼らは誰かを探していると言って、

部屋へずいずいと入って来て、部屋の隅々をチェックして回り、

それが済むと、また騒然と出て行った。。。


「後から考えたら、絶対そんなことないはずなんだけど、

場所が場所だけにね。きっと、旧日本軍の兵士たちの

亡霊だろうってことになったのよ」


太平洋戦争が終わって60年以上経った今でも、

仲間を探してる・・・・・・と?


「そういうことね」


そういえば、12月8日は日米開戦の日でしたね。


今からは想像もつかない出来事ではありますが。


人生25年と言われ、

国策で塗炭の苦しみを抱え、

夢かなわず短すぎる一生を終えた若者達が、

確かにいたのですね。


今は何でもある時代。

無い物を探す方が難しいくらいに。

なのに、本当に欲しいものは、

何も手に入らないような気がします。


けれど人は、

どんな時代に生まれても、

結局は

『どう生きるのか?』

を試されているのかもしれません。


今日、誰に、何ができただろうか?

そして明日は?


クリスマスには、

明るい日のある今に、感謝をこめて。

キャンドルに火を灯します。


オレンジに輝く炎の中に、懐かしい人の笑顔が

見えるかもしれません。


教会で薄いベールを被り、

祈りを捧げる大空さんの綺麗な横顔が

一瞬、見えたような気がしました。


2007年は、あと22日ですね。


それではまた。


聞き手は青空はるかでした!


以下次号、乞うご期待!!!


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もしも、思わぬ人に機内で再会したら、

あなたなら、どうしますか?



神戸の旧外国人居留地に、商船三井ビルヂングという

ロマンティックな石造りのレトロビルがあります。


今日お話くださったのは、現役CAのShokoさん。

長い黒髪と大きな瞳、

そしてすらりとしたボトムにローズ色と黒の流麗な巻きスカートが

印象的です。


学生時代、Shokoさんは

CAになろうかどうしようかと迷いながら、

このどっしりとした歴史的なビルの前にたたずんでいました。


「就職活動なんて、しなかったわたしが

唯一、それらしきことをしたのがここ。

この素敵なビルで働きたいなあ~って思ったんですね」


このビルはあの阪神大震災でも、

びくともしなかった西洋建築の代表です。


中に入ると、

天井は高く高く、しーんとした広々とした廊下に、

深緑のリノリウムにヒールの靴音が、

こつこつと響きます。

樫の樹の頑丈そうなドアに真鍮のノブ。

どこか外国の博物館の一隅かと思う空間。

元は、倉庫代わりに使われていたとか。


・・・で、就職試験を受けたんですか?


「ところが、新卒募集はしてなくて、積極的に就活したのに

ていねいなお断りの直筆の手紙が来たんです。

だから、そのあとJALを受けました。そしたら・・・


今度は受かったんですね?


「ほんとに、人生って思い通りに行かないものね」


ちょっとお茶目にうつむきながら、

Shokoさんが笑います。


そんな彼女がJALの制服を身にまとい、

国際線に乗り組んで、何年もたったある日のこと。


機内ファーストで、

なんと。

当時の商船三井(株)CEOと、予期せぬ再会!


びっくりしたでしょうね?!


Shokoさんは、肩を揺らして、くすくす笑いました。


「それがね。そのCEO、わたしに瀬戸内海の綺麗な写真のついた

テレカを二枚くださったんですよ」


テレカを? どうして?


「あの時、採用できなかったお詫びだって」


へえ~、粋な方ですね~~~


「そうですね。今では経済界のドンになってしまいましたけど」


Shokoさんは、そう言って空を仰いでいたずらっぽく


「あ~めん」


と十字を切りました。


思わず笑ってしまいます。


素敵な再会。


機内には、そんな予期せぬ出会いもあるんですね。


人との出会いが人生を創っていく。


陽に向かいつつ歩きだす

Shokoさんにも、

これからうんと幸せな人生が待ってるから。


神戸の港から潮の香りと

客船の汽笛が耳に頬に優しく通り過ぎていきます。


この商船三井ビルは

戦火も震災も耐え、何事もなかったかのように

重厚で優美な姿を

今と言う今も

わたしたちに見せ続けています。



聞き手は青空はるかでした。

以下次号、乞うご期待~~~!船


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港に

白い豪華客船「飛鳥Ⅱ」が停泊しているのが見えます。


展望台から

秋晴れの青空、霞む水平線、神戸空港。

そして、眼下に見下ろす旧居留地と遥かな海。


神戸は、また旅人で賑やかになってきました。


このごろは豪華クルーズが大流行。

クリスマスに向けて、北野異人館などでも

いろんなイベントが続きます。



大空まいさんは、地上24階から

しばし静かに港を見下ろしていました。

今日は濃いラベンダー色のジャケット姿。


その傍らで、

「やっぱり神戸に住みたいです~~~」

と、大阪在住の乙女さんのつぶやき。

彼女のカーディガンも偶然、ラベンダーの花の色。



わたしは昔から嫌なことや迷いごとがあると

よくここへ来るのですが、

お二人とも、とても喜んでくれました。


広大な景色を見に

ここへ来るのも

旅に出るのも

自分って小ちゃいなあ、と思いたくて

するのかもしれません。



「関空から、スティービー・ワンダーを

乗せたことがあってね」


大空さんは、明るい声で

いきなり思い出したように話し始めます。


あの♪スティービー・ワンダー♪ですか?!


「そう。コンサートだかなんだかで来日してたみたいなんだけど、

機内に乗ってきたとたんに、もうびっくり!

ものすんごい大きなヒトなのよ。顔も何も大きい大きい」


もちろん、4人のボディガードと共に

ファーストクラスでの御搭乗だったそう。


「でも、ず~っと揺れてるの。こんなふうに」


大空まいさんは、頭や肩を縦に振り振り、

顎を突き出し、器用にモノマネしてみせます。音譜にひひ


「あの人がずっと揺れてるのを見てたら、

ついに、こっちが気分悪くなっちゃって」


爆笑!!!


JALのベテランCAを酔わせるとは、

さすがUSのスーパースターです(笑)


揺れ=全身これミュージックなんでしょうか???



リズムを刻む。


それも素敵なリズムを。


そういうふうに毎日を過ごせたら、

スティービー・ワンダーのように

大きな限界をも乗り越え、

きっと自分らしく輝く人生を送れるのかもしれません。



そういえば、

ジェット機もずっと揺れながら

空を飛んでいるんですものね。


CAの仕事は

旅の報告と連絡の繰り返し。


相談する機会はあまりないそうです。


だから単調な一面も。


そんな時こそ、お気に入りのリズムでリフレッシュ。



神戸ではJAZZーSTREETがはじまりました。


誰もが耳に揺れる音楽に

心癒される季節の到来です。



聞き手は青空はるかでした。


今日もお読みいただきありがとうございました!


以下次号、こうご期待~~~音譜


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